国際原油価格が4年来の最低水準に落ちた。石油輸出国機構(OPEC)と主要産油国協議体であるOPECプラスが6月の原油生産量を1日41万1000バレルに増産することで合意してだ。
主要外信によると、5日のニューヨーク商品取引所で6月引き渡し分ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は前営業日比1.99%安の1バレル=57.13ドルで取引を終えた。ロンドンICE先物取引所で7月物ブレント原油も1.73%安の60.23ドルで取引を終えた。WTIとブレント原油とも2021年2月以降で最も低い。
これは原油供給拡大の可能性が大きくなったためだ。昨年まで1日220万バレルの自発的減産を履行した主要産油国は、今年4月から原油生産量を1日13万8000バレルずつ増やすことにしたが、5月から2カ月連続で増産幅を拡大した。増産分が1日96万バレルに達し、1日220万バレルの減産が44%解除される計算だとロイター通信は指摘した。
市場ではこうした決定は予想外という評価だ。今年初めだけでも1バレル=75~80ドル水準で推移していた国際原油価格は現在20%ほど下落した。世界的な景気低迷により原油需要が落ち込む状況で供給量を増やすのは原油価格下落をあおる。エネルギー調査会社ライスタッド・エナジーのアナリスト、ホルヘ・レオン氏はAFPに「石油市場に爆弾が投下された」と評価した。
ここには世界最大の石油埋蔵国でありOPECプラスを主導するサウジアラビアの計算が
背景にあるとの分析が出ている。表向きの理由はOPECプラス内部で広がる神経戦だ。割当量を守らない国に対するサウジの「報復」ということだ。2022年からOPECは原油価格下落を防ぐために加盟国全体が参加する減産措置を始めた。国ごとに割当量が決められるが、カザフスタンとイラクなどが「自国の利益が優先」としてこれを超えて原油を生産した。
ロイターは消息筋の話として「サウジは割当量を順守しなかった国に対する警告を繰り返した。カザフスタンなどが減産をしっかり履行しないならば、1日220万バレルの自発的減産は11月前に解除されるだろう」と伝えた。レオン氏も「サウジなどが数年間の減産の末に戦略を変え、市場シェア拡大を狙うという決定的メッセージ」と解釈した。
また別の背景は米国との関係だ。トランプ大統領は13日から16日までサウジなど中東諸国を訪問する。トランプ大統領はエネルギー費用を下げると公約してきたが、サウジがこれに対し前向きな返事をしたとの解釈が出ている。ブルームバーグによると、一部アナリストは「トランプ大統領に『安い石油』という手土産を持たせて米国とさらに強力な安全保障関係を構築するためのもの」と説明した。ニューヨーク・タイムズは「国防と人工知能(AI)分野で大きな野心を抱いているサウジとアラブ首長国連邦(UAE)がある程度の譲歩を望んでいる」と分析した。
だが増産カードは両刃の剣も同然だ。アブダビ商業銀行のチーフエコノミスト、モニカ・マリク氏はフィナンシャル・タイムズに「原油価格が下がり続けるならば、サウジ政府は支出を緊縮し負債を増やさなければならないだろう」と話した。サウジの今年の財政赤字は2倍以上増えるだろうという見通し(ゴールドマン・サックス)が出ている中で、大規模開発プロジェクトのネオムシティ建設などに支障が生じる恐れがあるとの懸念が出ている背景だ。