アナウンサーにはキビシい局
フジテレビの親会社「フジ・メディア・ホールディングス(FMH)」の公式サイトで《フジテレビの再生・改革に向けた8つの具体的強化策及び進捗状況》が明かされた。FMHの金光修社長(70)、フジの清水賢治社長(64)が会見を行ったが、8つの具体策のうち、最も注目されたのは《編成・バラエティ部門を解体・再編 アナウンス室を独立へ》の項目だった。
これまで同局アナウンス室は編成局の傘下にあり、アナウンサーのキャスティング権は編成局の幹部が握っていた。元タレント・中居正広氏(52)による同局元女性アナウンサーへの《業務の延長上での性暴力》が認められた案件では、中居氏と被害者の間を取り持ったのは元編成局幹部だった。また、フジの港浩一前社長(72)ら、歴代の幹部たちが複数の女性アナを芸能事務所幹部やCMスポンサー企業幹部との会食に動員し、女性アナのことを「喜び組」と呼ぶ幹部がいたことも判明している。
会見で清水社長は、「アナウンサーの番組への起用方法について、アナウンス室の権限を強化し、人権に配慮したマネジメントを目指し、番組との調整役を果たすコーディネーターを新設する」と表明した。
「一般職とは違うアナウンス職で採用されたアナウンサーたちですが、男女とも、将来有望なアナウンサーが続々と退社してフリーに転身している状況を見ると、かなり過酷な職場だったと思います。女性アナの場合、結婚・出産を機に復職せずに退社を選ぶケースが多かった。また、特にウチの男性アナは定年まで勤めずに退職してしまう人が他局に比べて多い傾向にあります。自分がしたい仕事をできないアナが、かなりいるということでしょう」(フジの局員)
もともとフジは、1959年に在京キー局として4番目に開局。当初は他局からの移籍組や新規採用者からアナウンサーらを集め、徐々にその人数を増やしてきたが、今では考えられない待遇格差があったという。
「当初、男性アナは正社員でしたが、女性は契約社員。男性と大きな待遇の格差がありました。81年、NHKの人気アナウンサーだった故・頼近美津子さんを引き抜き、フジ史上初の正社員女性アナが誕生し、女子アナブームを起こしました。しかし、頼近さんは84年に当時のフジ副社長だった創業家の鹿内春雄氏と結婚し、退社。それでも頼近さんのおかげで、すでに入社していた女性アナたちも正社員に昇格することに。以後、山村美智子(現・美智=68)さん、長野智子さん(62)らが活躍し、中井美穂さん(60)、河野景子さん(60)、故・有賀さつきさんらの活躍で本格的に女子アナブームが到来。フジの入社希望者が急増したのです」(ベテランの芸能記者)
フジは82年から93年まで、12年連続で視聴率3冠王を達成。全日帯(午前6〜深夜0時)、ゴールデン帯(午後7〜同10時)、プライム帯(午後7〜同11時)の3部門すべてでトップに立ち栄華を極めていた。
しかし、自局のアナウンサーを有効に活用し、将来に向けて育成しようとする上層部の意志が他局に比べて希薄であることは、当時のキャスティングから露見していた。
「84年10月から97年3月まで放送された、夕方の看板ニュース番組『FNNスーパータイム』の男性メインキャスターには故・逸見政孝さん、露木茂さん(84)ら安定感のある自局のアナを起用していました。しかし、女性のメインキャスターには幸田シャーミンさん(69)、安藤優子さん(66)、松山香織さん(63)と、いずれも社外の人材を起用。男性メインキャスターの中には、監督として慶大ラグビー部を日本一に導いた後、一芸入社でフジに入社した故・上田昭夫さんを起用した時期もありました。報道志望で入社して来たアナウンサーたちからすれば、『この会社にいる限り、夕方のニュースをメインで読めることはない』と感じる向きも多く、モチベーションが上がるはずがありません。もっと、若いアナウンサーにチャンスを与えるべきでした」(先の記者)
だが、その状況は現在も変わらず。24年4月から夕方のニュース番組「Live News イット!」ではメインキャスターに同年2月にNHKを退社しフリーに転身したばかりの青井実アナ(44)を起用。しかし、起用後の平均世帯視聴率は同時間帯の民放キー局のニュース番組の中で最下位が定位置に。おまけに、4月にはフジが青井アナの番組スタッフに対するパワハラ行為を公表し、青井アナは番組内で謝罪する事態に至った。