米国への移転に苦慮する自動車メーカー
米国への輸入自動車や関連部品に高関税を課し、自動車の生産拠点を米国内に移すよう促すトランプ大統領。4月29日、米国内で生産する自動車メーカーを対象に輸入部品への関税を軽減する措置を講じると発表したが、依然として米国外のメーカーは生産拠点の大規模な移転を迫られており、そのシフトは容易ではない。
自動車メーカーに求められるのは単なる工場の移転だけではなく生産システムそのものの移管であると、米メディア「CNBC」は報じる。同メディアの取材に応じた日産のアメリカ地域会長を務めるクリスチャン・ムニエは「日産の動きは速いが、これは数ヵ月で終えられることではない」と語る。
まず、工場のための用地選定から始まり、新工場建設の許可を取得し、その後に労働者の雇用や生産に必要なインフラ整備が必要となる。
CNBCは、新工場の許可だけでも半年から1年かかるとし、本格的な生産開始に必要な準備はさらに1年以上を要すると報じている。今回の関税軽減措置は2年間限定だが、その間にサプライチェーンを再構築するのは非常に難しいことが窺える。
米国市場で存在感を持つことで恩恵を受けることもあれば、かえってそれが仇となる可能性もあると、英紙「フィナンシャル・タイムズ」は指摘する。トランプ政権の貿易交渉は数時間で結果が覆るため、多額の投資と時間をかけて米国に生産拠点を集中させることにはリスクが伴うというのが、同紙の挙げる理由だ。
トランプ政権の発足以前から、米国に拠点を置いていた自動車メーカーも安泰ではない。フィナンシャル・タイムズは、「米国市場での成功が仇になりうる例」として、ホンダを挙げる。
COURRiER Japon