今春から多子世帯に向けた「大学無償化」が始まった。多子とは子ども3人以上を指し、2人とは違って児童手当の増額など国から受け入れられる恩恵が手厚くなる。その一方で、地方自治体でも子どもが3人目以降で独自の祝い金を支給するところも多い。中には総額100万円を支給する自治体もあり、地方でも様々な多子支援が広がっているようだ。
■第3子から児童手当が増額。保育料も無料
4月からスタートした「大学無償化」とは、正確には2020年から始まっている「高等教育の修学支援新制度」の拡充だ。今回の拡充では、子ども3人以上を扶養している世帯が対象となり、所得制限なしで大学(短大ほか専門学校なども含む)の授業料などを国が負担してくれるようになった。
ただし、無償化といっても上限はある。例えば国公立大学の場合は「入学金28万円・授業料54万円」、私立大学では「入学金26万円・授業料70万円」がそれぞれ上限だ。そして、子どもが3人いる世帯でも、長子が就職などで扶養から外れれば、下の子2人は無償化の対象からは外れる。あくまで「扶養する」子どもが3人以上いなければ対象にならない。そのほか、子どもの成績評価にも一定の要件を設けている。
「『大学無償化』では上限額や課される条件がいくつかあるものの、子ども3人以上と2人以下では国から受けられる恩恵に大きな差があるのは確かです。この『大学無償化』以外でも、昨年10月からは児童手当が拡充され、第3子以降はこれまでの倍となる3万円が支給されていますし、保育料は副食費含めて第3子は無料です」(全国紙社会部の教育担当記者)
■3人目以降に総額100万円の応援金
このような多子世帯への支援は国だけでない。地方自治体でも様々な取り組みが広がっている。
山梨県北西部に位置する北杜市は南アルプスの自然に囲まれ、移住先としても人気がある。そんな北杜市では2022年から、第3子以降が生まれた世帯に対し、その子が7歳になるまで総額100万円の応援金を支給するようになった。
同市では出生時に第一子で10万円、第2子で30万円を支給するが、第3子以降はさらに手厚くなり、出生時に30万円、3歳で20万円、7歳で50万円と、その子の成長に合わせて支給する。首都圏から子育て世帯を呼び込みたい狙いもあるようだ。
2年前に都内から北杜市に家族で移住してきた中山久さん(仮名、42歳)は、このような多子世帯への支援が移住する後押しになったという。