「発表は後手で本命には逃げられ…」自民党が「参院選タレント候補」擁立に大苦戦の「もっともな理由」


GW真っ只中の5月1日、自民党の参議院比例代表公認候補となったプロダンサーの中田フィッシュ氏(39)が渋谷区の宮下公園跡地にある商業施設内のダンススタジオで出馬会見を行った。兄は『オリエンタルラジオ』の中田敦彦(42)。

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兄弟で『RADIO FISH』というダンスユニットを組んで活動しており、’16年の『NHK紅白歌合戦』に出場。高校・大学とダンスの全国大会優勝経験を持ち、世界大会での実績もある。TikTokフォロワー数は22万人を誇っている。

「若年層をはじめ、自民党がリーチできなかった層を呼び込めるのではないか。ストリート出身のフィッシュ氏には選挙に足を運ばなかった浮動票を掘り起こす可能性があります」

会見で司会も兼ねた小林史明環境副大臣(42)はフィッシュ氏の出馬にそう期待を寄せる。

自民党は7月投開票の参議院選挙で日本医師会や郵便局長会などの組織内候補を含む27人(現職14人、新人13人)の擁立を決定。前回’22年参院選と同規模の30人程度の擁立を目指す。’22年の参院選では比例で18議席を獲得したが、今回は「政治とカネ」の問題で政党支持率が低迷し、永田町に出回っている選挙予想では「12前後」と振るわない。

「参院選には決まってタレントが出馬し、良くも悪くも話題となる。知名度があればあるだけ“後出しジャンケン”のように駆け込みで出馬し、フレッシュな印象のまま投票に結びつけたいという思惑があり、たいていは出馬表明が選挙直前となる。

ただ、今回は1年以上続く、『政治とカネ』の問題で支持率が低迷し、石破茂首相(68)の商品券配布で支持率がさらに下がり、著名人に打診をしても色よい返事がもらえず、発表が後ろ倒しとなってしまった」(自民党ベテラン秘書)

「自民党はフィッシュ氏の他にも有名人を擁立予定だ」と囁くのは、別の秘書だ。

◆アナウンサー候補を逃してしまい……

「プロレスラーの大仁田厚氏(67)の擁立を図り、古賀誠元幹事長(84)の秘書だった藤丸敏衆議院議員(65)が議員会館を行脚している。’07年に自ら離党した大仁田氏には、岸田文雄元首相(67)ら宏池会の議員が復党の請願書に署名をし、GW後に党紀委員会で復党が了承されれば比例の公認候補となろう。

他には『筆談ホステス』で知られる斉藤里恵都議(41)や鈴木宗男参議院議員(77)も比例代表の公認候補となる見込み。その4名が比例票の底上げ要員だが、人材不足が透けて見え、議席増効果も限定的では……」

裏金問題の逆風に加えて、玉木雄一郎代表(56)率いる国民民主党の人気もマイナス要因だ。昨秋の衆院選で4倍増の28議席の躍進を遂げた余勢を駆って1〜4月に投開票された横浜市議補選、北九州市、小金井市、大分市、静岡市、鎌倉市などの市議会選挙で国民民主党の候補がトップ当選を果たしている。

「国民民主の東京選挙区で出馬が決まったNHKアナウンサーの牛田茉友氏(39)には自民党も萩生田光一元政調会長(61)らが接触し、彼女は大阪府池田市出身のため『大阪か全国比例で』と打診をしていた。だが、フタを開けたら国民民主に持っていかれた。かつて自民党の公認を得るために裏金が飛び交っていたのがウソみたいな状況だ」(自民党大阪府連所属の元衆議院議員)

共同通信の3月の調査では、若年層の政党支持率は自民党16.7%に対し、国民民主党が20.6%と逆転している。

◆無党派層へのアプローチは

先のフィッシュ氏に出馬を打診したのは自民党のみだったという。自民党の現状についてフィッシュ氏本人に尋ねると、「非常に厳しいと思う。厳しくてもやりたいところでやりたいことをする」との返答があった。

前回参院選で自民党が比例代表で擁立した著名人では漫画家の赤松健氏(56)、元『SPEED』の今井絵理子氏(41)らが当選。他党では中条きよし氏(79)、ガーシー氏(53)、水道橋博士(62)らが出馬し、選挙戦を盛り上げた。

参院選の比例は全国を1つの選挙区として候補を選ぶため、知名度がものをいう。そのため、各党が著名人候補を出すのが恒例となっていた。

「それゆえ、登院せずに除名となったガーシー氏や国会の質疑で新曲やディナーショーの告知をした中条きよし氏のような議員が生まれることになる。比例の改選定数は50もある。削減も考えるべきでしょう」(前出・ベテラン秘書)

参院選まで約2ヵ月。立憲民主党は先の都知事選で128万票を獲得した蓮舫氏(57)を擁立することがほぼ確定している。その他の党からもタレント候補の電撃出馬はなさそうで、ビッグネームの政界転入は起こらなそうだ。

会見でフィッシュ氏はバンドワゴン車を使っての全国行脚計画を明かし、こう言い添えた。

「ストリートにはいろいろな人がいて、それぞれに正義があり意見が飛び交う。落としどころを作らないといけないのは政治も同じ。理想論だけではなく、現実的な落としどころを作れる自民党から出馬したいと考えた。ウルトラCは起こらない。地に足をつけた地上戦で地道にやるしかない」

自民党から離れていった若者や無党派を呼び戻すことはできるだろうか。

取材・文・撮影:岩崎大輔

FRIDAYデジタル



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