2005年に発覚し、まさに世間を揺らした耐震強度偽装事件。連日テレビに映ったこの人物の個性たるや強烈だった。偽装に手を染めた一級建築士と共に疑惑の中心にいた、不動産会社「ヒューザー」の小嶋(おじま)進元社長(71)のことだ。
【写真を見る】まるで別人のような笑顔! 71歳のおじいちゃんになっていた「ヒューザー元社長」
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「オジャマモンと呼んで下さい」
小嶋氏は、とかく話題には事欠かなかった。
一級建築士による複数のマンションの耐震構造計算書の偽造が発覚したのは05年11月。建築士は国交省の聴聞会でヒューザーなどデベロッパー3社からの圧力があったとの説明に及ぶ。
ヒューザー社長だった当の小嶋氏は、テレビに出演しては自分の名前をもじり「オジャマモンと呼んで下さい」と言い放ち、国会の参考人招致では疑惑に関係した検査機関社長を「ふざけんじゃないよ!」と罵倒。日本中の訝しげな視線の中で発した言葉が「私の顔が悪人の顔に見えますか」――。迷言の数々がうさんくささに拍車をかけた。
「当時、東京はもちろん地方のサウナに行っても“あっ”って顔で見られて……。連日悪人のように報じられ、心が休まらなかったですよ。世間の9割以上の人が、いまだに私のことを悪人だと思ってるでしょうね」
こう語るのは、小嶋元社長その人だ。ヒューザーは06年に破産し、小嶋氏も偽装を知りつつ物件を販売したとして詐欺罪に問われた。11年に最高裁で懲役3年・執行猶予5年の刑が確定。偽装の張本人たる建築士は、建築基準法違反などの罪で懲役5年の実刑判決を受けるが、裁判の過程で“圧力はなかった”と単独犯行であることを証言している。その点、小嶋氏には気の毒な面もある。
“サービス精神”が裏目に
さて小嶋氏は、ホリエモンこと堀江貴文氏と自身の写真が並ぶ当時の週刊誌のページを開いて、こう言った。
「彼がよくなかったよ」
指差したのは堀江氏の顔。
「あの頃は彼がテレビなどに出ていたでしょ。だからつい、私も“オジャマモンと呼んで下さい”なんて言っちゃってね」
サービス精神が裏目に出た、とおっしゃるのだ。
「私は偽装には一切関わってなかったし何も知らなかったのに、黒幕のように仕立て上げられたんです」
だが、建築主としてヒューザーの責任も免れまい。
「それはその通りです。購入者の方々には今も申し訳ない思いでいっぱいです」
そしてこうも言う。
「私が目指したのは庶民にも買える広いマンション。会社は当時100平方メートル以上のマンションではシェアナンバーワンでしたが、それは競合他社がほぼいなかったからです。どこも庶民が買える広い部屋を作ろうとしませんでした」