ウクライナ侵攻を続けるロシアで9日、対ドイツ戦勝80年の記念式典が大々的に開かれた。プーチン露大統領は対米外交などで共闘する中国の習近平国家主席を厚遇した。狙いについて、熊倉潤・法政大教授(中国政治)と岡田美保・防衛大教授(ロシア外交・安保)に聞いた。【聞き手・畠山哲郎、浅川大樹】
◇「良好な関係、今後も続く」
◇熊倉潤・法政大教授(中国政治)
今回、習近平国家主席は、さまざまな問題が指摘される中でも式典に出席して、中露両国は第二次世界大戦で勝利し、戦後の平和秩序を作った正当性のある国であるということをアピールしようとした。
同時に中国などへ高関税政策を打ち出すトランプ米政権の保護主義に対し、ロシアと共闘して対抗する姿勢を示す狙いもあった。
トランプ大統領のようなトップがいる米国と自国1国だけで向き合うのは、習氏にとっても恐ろしいことだ。そんな中、国家指導者としての経験が長く、一緒に対抗してくれるプーチン大統領のような「盟友」がいるのはありがたいはずだ。
中露は「便宜的な結婚」をしているようなもので、お互いに役に立つことを利用し合う関係だと指摘されてきた。だが、習氏はプーチン氏に対する個人的なシンパシーが強いのではないか。
会談後に発表された共同声明では、ウクライナ情勢について「危機の根源を絶つことが不可欠だと両国は認識している」との文言が入った。中国もロシアの姿勢に歩み寄り、理解を示していると言えるものだ。
中国は大国化しロシアとも国力に差はあるが、両国の現在の指導部が変わらない限り、良好な関係は今後も続いていくだろう。
◇中露、互恵的な関係維持し米国に対抗
◇岡田美保・防衛大教授(ロシア外交・安保)
今年の軍事パレードでは各国の首脳の参列に加え、軍部隊のパレード参加により、国際色豊かな印象となった。ロシアとしては「勝利」を大々的に演出することで、山積する諸問題から国民の目をそらすと同時に、友好的な国々との結束をアピールする狙いがあったと考えられる。
8日の中露首脳会談は目新しさには乏しかった。だが、ロシアのウクライナ侵攻開始後は対独戦勝式典に参加していなかった中国の習近平国家主席が訪問する機会を捉え、共同声明を出して両国関係を再確認したこと自体に意味があった。
首脳会談後のプーチン大統領の声明は、「歴史の歪曲(わいきょく)やナチズム、軍国主義の復活を共同で阻止する」などとし、歴史認識で共闘する姿勢も示した。
ロシア経済はウクライナ侵攻の長期化で今後厳しくなり、対中依存が強まるだろう。これを受けて、中露関係でロシアが従属的な立場になるとの見方もあるが、疑問だ。ロシアもこうした認識が広がることには神経をとがらせている。
高関税の応酬で米中対立が強まる中、中国側としても、ロシアには大国であってもらわないと協調する意味が薄れる。中露は互恵的な関係を維持しつつ、米国に対抗していくスタンスを強調していくことになるとみられる。