日本の三菱自動車がオーストラリアに向けハンドルを切った。主要販売先だった東南アジア市場に中国企業が大挙進出してきたことを受け代替市場の確保に乗り出したのだ。韓国の自動車メーカーもトランプ米大統領の関税障壁を避けるために新興国市場での販売を増やしている。
三菱自動車は7日、台湾のフォックスコンと発注者ブランドによる生産(OEM)契約を結んでオーストラリアとニュージーランドでフォックスコンが製造した電気自動車を発売すると明らかにした。アップルのiPhoneの委託生産企業として知られるフォックスコンは、2022年に台湾の自動車メーカー裕隆自動車と合弁で電気自動車メーカーのフォックストロンを設立した。三菱自動車はフォックストロンの電気ハッチバック「モデルB」をオセアニア市場向けに合わせて改良し、来年下半期に発売する予定だ。
北米と東南アジア地域に集中していた三菱自動車がオセアニア市場を狙うのは、中国の低価格電気自動車の攻勢を避けるためだ。世界的コンサルティング企業のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、中国BYDは昨年東南アジア主要6カ国で前年比62%増となる5万8376台の自動車を販売した。同じ期間にトヨタが6.6%減、ホンダが10.9%減、スズキが鈴17.4%減など日本メーカーの販売台数が一斉に減少したのと対照的だ。東南アジア最大の自動車市場であるインドネシアでは昨年4万4557台の電気自動車が販売されたが、最も多く売れたモデル5種類のうち3種類が中国の自動車メーカーBYDとチェリーのモデルだった。
これに対し、オーストラリアは日本車がしっかりとつかんでいる市場だ。昨年オーストラリアで最も多く売れた自動車ブランドはトヨタの24万1296台で、フォードが10万170台、マツダが9万5987台と続いた。自動車販売台数上位10社のうち5社を日本のメーカーが占めた。現代(ヒョンデ)自動車は7万1664台で6位、起亜(キア)は8万1787台で4位に入り、中国メーカーは4万2782台で長城自動車が10位に入っただけだった。全市場規模124万台は韓国の163万台には満たないが、スポーツ多目的車(SUV)の人気が高く、高価格モデルの販売が活発な高収益市場だ。
韓国の自動車業界もオーストラリア市場に関心を傾けている。米国の関税の影響を挽回するためには別の市場で販売を増やさなければならないためだ。現代(ヒョンデ)自動車は3月、カナダ販売法人長のドナルド・ロマーノ氏をオーストラリア販売法人で初めての外国人最高経営責任者(CEO)に任命し、CEOの職級を常務から社長に引き上げた。ロマーノ氏は昨年カナダで過去最大となる13万8755台の販売実績を記録した販売専門家だ。現代自動車・起亜(キア)は最近海外法人長に今年の目標値を10%以上超過して販売するよう指示を出したりもしている。
ルノーコリアは中南米市場を狙っている。ルノーコリアは昨年発売した新型SUV「グランコレオス」を中南米に輸出するために900台を船積みしたと明らかにした。中南米市場は産業発展とともに自動車の需要が増えることが期待されている地域だ。市場調査会社のモードーインテリジェンスによると、南米地域の自動車市場規模は今年の273億ドル(約39兆5798億円)から2030年には412億ドルに拡大する見通しだ。現代自動車グループは中南米地域で最大の自動車市場であるブラジルに生産拠点を確保して現地市場を攻略している。現代自動車グループの鄭義宣(チョン・ウィソン)会長は昨年ブラジルで同国のルラ大統領と会い、2032年までに11億ドルを投資するという計画を明らかにしている。
問題は収益性だ。新興国市場は成長潜在力が高いが、低価格車両を好む消費者が多く、収益性の確保が難しい。韓国自動車研究院のイ・ハング諮問委員は「新興国市場で販売される自動車は年間2500万台水準で全世界の販売台数の25~30%を占める。韓国の自動車メーカーの立場では見逃すことはできない市場だが、収益性確保が難しい地域であるだけに、現地事情に合わせた戦略をしっかりと用意しなければならない」と話した。