ガザ、支援物資求める市民への発砲命令報道をイスラエル軍が否定

パレスチナ自治区ガザ地区では、人道支援を待つ市民が多数死亡する事態が続いている。こうした中、イスラエル国防軍(IDF)は、支援物資を取りに近づいた非武装のパレスチナ人への発砲を兵士に命令したとの新たな報道を否定した。ここ数週間で、食料配布所に近づいた民間人の犠牲者は数百人に上るとみられている。

ハアレツ紙の報道内容と兵士の証言

イスラエルの有力紙ハアレツは27日、ガザに展開するイスラエル兵が、脅威がないことが明らかであったにもかかわらず、援助拠点に近づくパレスチナ人の群衆へ発砲するよう指揮官から命じられたと報じた。

同紙に匿名で証言したイスラエル兵は、援助拠点へ向かう経路を「殺戮(さつりく)の場」と表現した。彼は、そこでは差し迫った脅威がなくてもイスラエル軍が発砲すると語った。記事によれば、イスラエル軍は最近、群衆を解散させるために砲弾を使うようになり、これが死傷者の急増につながったという。

イスラエル側の公式反応と閣僚の見解

IDFはこの報道を強く否定した。配給所に近づく市民を含め、民間人を意図的に攻撃するよう部隊に命じていないとし、民間人への意図的な攻撃は禁止されていると説明した。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアヴ・カッツ国防相もこの報道を一蹴した。彼らは、世界で最も道徳的な軍隊であるIDFをおとしめる悪質なうそであると断じた。

現地の状況と深刻な死者数

パレスチナ保健省によると、5月27日以降、援助拠点や支援物資を運ぶトラックに近づいたパレスチナ人が少なくとも500人以上死亡した。保健当局や救助隊員は、拠点に近づく市民がほぼ毎日銃撃を受けていると証言している。

6月のある事案では、負傷者を含む十人以上の目撃者がCNNに対し、イスラエル兵が群衆に向けて一斉射撃を繰り返したと語った。武器の専門家は、映像の発砲音や被害者から回収された銃弾の画像がイスラエル軍の機関銃と一致すると指摘している。

ガザ地区、人道支援を待つ市民の葬儀。発砲事件で死亡したパレスチナ人の棺を運ぶ人々。ガザ地区、人道支援を待つ市民の葬儀。発砲事件で死亡したパレスチナ人の棺を運ぶ人々。

IDFは、配給拠点付近の軍の陣地に接近するパレスチナ人に対して、複数回にわたる「警告射撃」を行ったことは認めている。死傷者に関する報告を調査しているとも明らかにしているものの、これまでのところ調査結果を公表していない。

戦争犯罪疑惑と今後の調査

ハアレツ紙によれば、軍の法務総監は、戦争法違反の可能性がある事案を調査する軍の機関に対し、援助拠点周辺での戦争犯罪をめぐる疑惑を調査するよう指示した。

死者が出ている援助拠点は、イスラエルと米国が主導する「ガザ人道財団(GHF)」が運営している。同財団はガザ南部と中部の数カ所で食料を配布しており、1カ月前の開始当初から混乱が続いている。拠点が開くと同時に群衆が殺到し、支援物資は1時間足らずでなくなることも多い。

GHFは、イスラエルと米国がイスラム組織ハマスによる支援物資の略奪を非難したことを受け、国連の支援機構に代わる形で設立された。ハマスは略奪をめぐる疑惑を否定しているほか、人道団体は国連の食料の大半は市民に届いていると指摘している。

まとめ

ハアレツ紙によるイスラエル軍のガザでの発砲命令に関する報道は、イスラエル国防軍によって強く否定された。しかしながら、ガザ地区の援助拠点付近で支援を待つ多数の市民が死亡している事実は変わらず、パレスチナ保健省の報告や目撃証言は深刻な現状を示している。イスラエル軍は死傷者報告を調査中としているが、その結果の公表が待たれる。ガザにおける民間人の安全確保と人道支援のあり方が引き続き問われている。