フィリピンで12日、中間選挙(上下両院選、地方選)の投開票が行われる。フェルディナンド・マルコス大統領の任期折り返しの信任投票となる。マルコス氏は、国際刑事裁判所(ICC)によるロドリゴ・ドゥテルテ前大統領の逮捕が「政治的」と批判され、支持率を落としており、予算審議などで強い権限を持つ上院で多数派を維持できるかが焦点となる。(マニラ 竹内駿平、写真も)
中間選挙は上院(24議席)の半数や下院(317議席)、州知事など1万8000超のポストが対象だ。上院では、マルコス氏とドゥテルテ氏がそれぞれ公認した候補者らが改選対象の12議席を争う。非改選組はマルコス氏に近い議員が多い。
ドゥテルテ氏は自身が進めた麻薬対策を巡り、3月に「人道に対する罪」の疑いで逮捕され、ICC本部のあるオランダ・ハーグに拘置されているが、南部ダバオ市長選に出馬している。ドゥテルテ氏側は逮捕を「政敵への破壊工作だ」とし、現政権に対抗してきた。
ドゥテルテ氏の長女サラ副大統領は8日、首都マニラの選挙集会で「我々は間違った指導者を選んだ代償を払っている」と述べ、副大統領の立場にいながらマルコス氏を批判した。
マルコス氏は9日、マニラで開かれた選挙集会で、「我々が目指すのは混乱をあおることではない」と呼びかけたが、支持率はドゥテルテ氏の逮捕後に急落した。比調査機関「パルス・アジア」によると、3月下旬の支持率は2月から17ポイント下落し、25%に沈んだ。上院選はマルコス氏側が優勢とされるが、上院で再選を目指すマルコス氏の姉アイミー氏がドゥテルテ氏の逮捕に抗議して離反するなど不安要素もある。
2028年の次期大統領選出馬を狙うサラ氏にとっては追い風だ。サラ氏はマルコス氏らを標的に「殺し屋を雇った」と発言するなどしたことから中間選挙後に弾劾(だんがい)裁判を控える。上院の3分の2以上の賛成で罷免(ひめん)され、公職に就けなくなる。上院選の結果は大統領選の出馬可否に直結する。
フィリピンの政治専門家は「サラ氏の弾劾裁判とドゥテルテ氏の逮捕は、マルコス政権による迫害とみなされている」と指摘する。マルコス氏が選挙で苦戦すれば、対抗勢力を意識した政権運営を迫られそうだ。