子供の脳と砂糖依存:甘いお菓子がスマホ中毒を招く仕組みとは?

子供たちの成長にとって、毎日の食事は非常に重要です。中でもおやつは、栄養補給の機会であると同時に、選ぶものによっては健康に予期せぬ影響を与える可能性も指摘されています。今回は、子供の食事に関する著書も多く、赤坂ファミリークリニック院長である伊藤明子医師の知見に基づき、甘いお菓子が子供の脳に与える影響、特に砂糖依存と他の依存症との関連について掘り下げます。不確かな情報が多い中、医学的な視点から見た子供のおやつのあり方について考えてみましょう。

砂糖と脳、ドーパミンの関係

「ドーパミン」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。ドーパミンは脳内の神経伝達物質の一つで、気分や行動、学習や記憶といった生命活動に不可欠な役割を担っています。しかし、糖分の過剰摂取は、このドーパミンの働きを低下させることが研究で示唆されています。

甘いものを日常的に食べすぎると、ドーパミンが脳の報酬系に分泌され、「一時的な幸福感」や満足感をもたらします。この感覚を再び味わいたいという欲求から、さらに多くの甘いもの、あるいはより強い刺激を求めるようになります。これは、体が特定の行動(この場合は甘いものを食べる)と報酬(ドーパミンによる快感)を結びつけ、その行動を繰り返すように学習するためです。

甘いものが引き起こす依存のリスク

甘いものを繰り返し求めるサイクルは、エスカレートする傾向があります。最初は少量で満足していたのが、次第により多くの量や、より強い甘さでないと満足できなくなっていきます。この状態は、甘いものへの「中毒」や「依存」の入り口となり得ます。

さらに懸念されるのは、甘いものへの依存が、他の種類の依存症にもつながりやすくなるという点です。ドーパミンが関わる報酬系の働きが過剰に刺激されることで、脳がより強い刺激全般を求めやすくなるためと考えられています。具体的には、甘いものへの強い欲求が、スマートフォンやインターネットへの過度な没頭(スマホ中毒、ネット中毒)といった行動依存、さらには薬物依存など他の物質依存への感受性を高める可能性が指摘されています(*1)。

[子供の脳と砂糖依存:甘いお菓子がスマホ中毒を招く仕組みとは?

alt=”子供が甘いお菓子に手を伸ばす様子と、その隣にあるスマートフォン”]

こうしたリスクを考慮すると、子供が幼いうちから甘いお菓子を食べる習慣を控えめにすることは、その後の様々な依存症を予防する観点からも有効と言えるでしょう。おやつは単なる嗜好品ではなく、子供の脳の発達や心の健康にも影響を与える可能性があるという認識を持つことが大切です。

健康的なおやつの選択肢

甘いお菓子を減らす代わりに、子供のおやつとしてどのようなものを選べば良いのでしょうか。おやつ時間を栄養補給の機会と捉え、甘さに頼らない健康的な選択肢を取り入れることが推奨されます。

例えば、自然な甘みを持つさつまいもやかぼちゃ、季節のくだものなどは、ビタミンやミネラル、食物繊維も豊富です。また、ナッツ類(年齢に応じて砕くなど安全に配慮)、豆類、さらめや酢昆布といった噛み応えのあるものも、満足感を得やすくおすすめです。これらは加工された甘いお菓子に比べて血糖値の急激な上昇を抑え、腹持ちも良い傾向があります。

さらに、習い事や遊び、家族との触れ合いなど、お菓子以外の方法で子供の脳の報酬系を刺激することも、甘いものへの過度な依存を防ぐための一案です。成功体験や楽しい経験もドーパミンを分泌させますが、これは健康的な形で脳の働きを促進します。

おすすめレシピ:たっぷりアボカドディップ

ここでは、子供のおやつ時間におすすめしたい、甘くないヘルシーなレシピをご紹介します。アボカドを使ったディップで、栄養価が高く、野菜嫌いの子供でも興味を持ちやすい工夫ができます。

材料(2人前)

  • アボカド(大きめ) …… 1個
  • 玉ねぎ …… 1/5個程度
  • すりゴマ(白) …… 大さじ2
  • ねりゴマ …… 大さじ1
  • ごま油 …… 大さじ1
  • レモン汁 …… 小さじ2
  • 塩、コショウ …… 適宜

作り方

  1. 玉ねぎをみじん切りにする。
  2. アボカドを半分に切り、種を取り除く。皮にそってスプーンなどで実を繰り出し、器に入れたら、スプーンなどですりつぶす。
  3. 2に1と、すりゴマ、ねりゴマ、ごま油、レモン汁、塩、コショウを入れて混ぜたらできあがり。

具のアイデアとアレンジ

ディップにつける具材としては、にんじん、大根、セロリ、パプリカ、きゅうりなどの野菜スティックがお好みで選べます。食物繊維もたっぷり摂ることができます。免疫力アップを期待したいときは、すぐき漬けを刻んで混ぜるのもおすすめです。

このレシピは子供が自分で作ることもできるほど簡単です。自分で作ったものは、普段あまり野菜を食べない子供でも興味津々で試してくれるかもしれません。

結論

子供のおやつは、単に空腹を満たすだけでなく、その質が子供の脳の発達や将来の健康、さらには行動習慣にまで影響を及ぼす可能性があります。特に砂糖の過剰摂取は、ドーパミンの働きを介して甘いものへの依存を生み出し、これが他の依存症のリスクを高めるという点は無視できません。

健康的なおやつの選択肢を増やし、甘いものへの依存に繋がりにくい食習慣を身につけさせることは、子供の健やかな成長のために親ができる重要なサポートの一つです。今回ご紹介したアボカドディップのように、栄養価が高く、子供と一緒に楽しみながら作れるレシピを取り入れることで、おやつ時間をより有意義なものに変えることができるでしょう。専門家である伊藤医師の知見を参考に、日々の子供の食事やおやつについて、今一度見直してみてはいかがでしょうか。

参考文献