【全2回(前編/後編)の後編】
宮内庁職員が天皇ご一家の生活費である内廷費を窃取した前代未聞の事件。同庁は事件の矮小化に躍起で問題職員の性別すら明かさないが、本誌(「週刊新潮」)は独自に職員を特定し、その祖母に話を聞いた。彼女が沈鬱(ちんうつ)な表情で語った、孫の人生と天皇ご一家との特別な関わりとは。
【写真を見る】「愛子さまと花火をする写真を見せてくれた」 360万円を盗んだ宮内庁職員(25)
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前編【「髪の毛ボサボサで帰ってきた孫が“借金がある”と…」 360万円を盗んだ宮内庁職員の祖母が明かす 「様子がおかしかった」】では、問題となっている職員の素顔や、窃取発覚直後の“異変”について、職員の祖母に話を聞いた。
25歳で「内舎人(うどねり)」の職に就いていた山崎永太(仮名)。宮内庁担当記者が宮内庁職員の採用ルートについて解説する。
「宮内庁職員の採用ルートは二つあります。一つは、国家公務員試験の合格者が、宮内庁の面接を受けて採用となるもの。もう一つは、いわゆる縁故採用です。約1000人の宮内庁職員のうち、大多数は公務員試験を経た人間ですが、一部には縁故採用もいます」
「オモテ」と「オク」
宮内庁には「オモテ」「オク」と呼ばれる独特の線引きがある。「オモテ」は、政府との調整や報道対応などの事務にあたる。他方、「オク」は皇室の方々のおそばに仕える。天皇皇后両陛下と内親王殿下を支える「侍従職」や上皇上皇后両陛下を支える「上皇職」などだ。
「公務員試験組は一般事務を担うオモテの職務に就きますが、侍従職などオクの職員は、いい加減な者に任せるわけにはいかないので、縁故採用もするわけです。もっとも、現在、縁故採用は少数。ただし、女性皇族の身の回りのお世話にあたる侍従職や上皇職の“女官”などには比較的多いといえます。現に上皇職の女官長は薩摩藩の末裔です」(前出の宮内庁担当記者)
「天皇陛下の間近でお仕えして、本当にかわいがってもらっていた」
続けてこう言う。
「内舎人は4〜5人いてオクの仕事に分類されます。20代なら年収は400万円台といったところです。天皇陛下のお召し物を整えたり、身の回りを世話する。若い公務員試験組がオクに選ばれるケースでは、各課の筆頭課長補佐あたりが“人当たりがよく、仕事もできるから”と推薦し、最終的に秘書課長が人事を決めるはずです」(同記者)
問題の職員の祖母の話に耳を傾けよう。
「永太は天皇陛下の間近でお仕えして、本当にかわいがってもらっていました。これは何年か前の新嘗祭(にいなめさい)の時の写真です。儀式のために天皇陛下が会場に入って来られる前に、こんな格好をして、灯明をつける役目を任されたんです。天皇ご一家が那須御用邸で静養された際も随行していたという話で、愛子さまと花火をしている写真も携帯で見せてくれたことがあります」