ドイツのメルツ首相は14日、連邦議会で初めての施政方針演説に臨んだ。ウクライナを侵攻するロシアの脅威が高まる中、「欧州の自由と平和の理念を再生するため主導権を取る」と述べ、欧州の安全保障強化を牽引(けんいん)する考えを強調。国防費を増額する方針で、「ドイツ軍が(通常戦力として)欧州で最強の軍隊となるために必要な財源を投入する」と訴えた。
侵攻への対応についてメルツ氏は「(欧州)大陸全体の平和秩序がかかっている」として、ウクライナ支援を継続する姿勢を示した。トランプ米政権との連携の必要性も強調し、「欧州と米国のパートナーとの間で最大限の団結を確保するため、あらゆる努力を続ける」と述べた。
一方、ドイツにとって米国に次ぐ2位の貿易相手国である中国について、ショルツ前政権は過度な依存関係を見直してきたが、メルツ氏も「一方的な依存関係を継続して減らしていく」と主張。外交面などでの中国とロシアの接近に「大きな懸念を持っている」と述べ、国際秩序を守る観点から「安定した、自由で安全なインド太平洋は、ドイツや欧州連合(EU)にとって戦略的に極めて重要だ」とも指摘した。
アジアでの友好国との連携をさらに拡大していく必要があるとして、日本やインドなどと関係を強化していく考えを示した。(ベルリン=寺西和男)
朝日新聞社