デンマークが、40年にわたって禁止してきた原子力発電について再検討をはじめた。同国の再生可能エネルギー重視の政策が大きく変わろうとしている。
デンマーク政府は、従来型の原子炉を1985年に禁止したが、今後、新世代の原子力技術の潜在的な利益を分析するとエネルギー相が発表した。
デンマークは、ヨーロッパで再生可能エネルギーが最も豊富な市場のひとつだ。世界最大の洋上風力電力会社「オーステッド」の本拠地でもある。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、同国の電力の80%以上が、風力、バイオ燃料、太陽光などの再生可能エネルギーで発電されている。
だが、デンマークはモジュール式の原子炉にも投資しはじめる可能性があると、エネルギー・気候大臣のラース・オーガードが示唆したのだ。オーガードは国内紙「ポリティケン」に次のように語っている。
「新しい原子力技術、すなわち小型で、モジュール式の原子炉の開発が進んでいるのはわかっています。しかし、ポテンシャルがあるだけでは充分でない。こうした技術を可能にした場合、それがデンマーク社会にとってどんな意味を持つのかも知る必要があるのです」
目下、ヨーロッパ中で、既存の原子炉の寿命を延長させる計画と並行して、新型の原子炉への関心が高まっている。そうしたなかで、デンマークは原子力の利用を再検討すると決断したのだ。
デンマークのアナス・フォー・ラスムセン元首相は、英紙「フィナンシャル・タイムズ」に、原子力の「ばかばかしい」禁止を解除することを支持するとして、次のように語っている。
「風力や太陽光の発電は、風と日光がある限りはいいものです。しかし、化石燃料を使わないベースロード(コストが低く出力が一定である)電源はなければならず、そこから原子力をあらかじめ除外するのは、ばかげています。私が推測するに、これはその禁止の解除に向けた(政府による)プロセスです」
Jillian Ambrose