(CNN) 米国内で市販されている異なるブランド100以上の米のサンプルを調べたところ、危険な水準のヒ素とカドミウムが含まれていることが分かった。CNNに最初に公開された新たな報告で明らかになった。
「低い水準でさえ、ヒ素もカドミウムも深刻な健康被害と関連している。糖尿病や発達の遅れ、生殖毒性、心臓病などだ」。報告の共著者で、子どもの有毒化学物質への暴露低減に取り組む団体、ヘルシー・ベビーズ・ブライト・フューチャーズの調査責任者を務めるジェーン・フーリハン氏はそう述べた。今回の報告は同団体が作成した。
「幼い子どもの重金属汚染には特に懸念がある。発達初期の暴露は知能指数(IQ)の低下や広範囲にわたる認知及び行動障害と関係するからだ」(フーリハン氏)
全米の食料品店や小売店で購入した米のサンプルのうち、4分の1は米食品医薬品局(FDA)が2021年に設定した乳児用米シリアルの無機ヒ素の基準を上回っていた。当該の報告は15日に公表された。
フーリハン氏によれば、FDAが乳児用米シリアルの無機ヒ素の規制値を100ppbに定めて以降、これらのシリアルに含まれる無機ヒ素の水準は45%低下した。しかしFDAは、調理のため購入される米の無機ヒ素の基準については対処してこなかったという。
0~2歳児にとっては米シリアルよりも米そのものが無機ヒ素の重要な暴露源だということが明らかになったと、フーリハン氏は述べた。
ヒ素は土壌や水、空気から検出される天然元素で、無機のものは最も毒性が高い。ここでの「無機」とは化学用語であり、農法とは無関係。
ヒ素は発がん性物質でもあり、妊娠中を含め発達初期の暴露は特に危険だ。流産や死産、早産につながる恐れがある他、生まれてから神経発達症にかかる場合もあると、米小児科学会は述べている。
米生産者を代表する全米ライス連合会は電子メールでCNNの取材に答え、米国で生産される米に含まれる無機ヒ素の水準は世界最低レベルだと説明。広報並びに戦略開発担当幹部のマイケル・クレイン氏は、「米に含まれる微量のヒ素の結果、健康上の問題が生じるとの見方には同意しないが、我々は引き続きFDAと連携し、米国内で出回る米があらゆる基準を確実に満たすよう取り組んでいく」と述べた。
その上で、米国人が食生活で摂取するヒ素の割合は青果と果物ジュースが42%で最も高く、米は17%だと付け加えた。
一方、前出のフーリハン氏は、青果が数十種類で42%なのに対し、米はそれのみで17%を占めていると指摘。単一の食材として米国人の食生活の中でヒ素の最大の摂取源となっている公算が大きいと述べた。
「平均すると、0~2歳の全乳児にとって、米はヒ素に暴露する割合の7.5%を占める。これは他のどの固形食よりも高い」と、フーリハン氏。また同年齢のヒスパニック系、アジア系の子どもだと、このレベルはそれぞれ14%、30.5%に上昇すると付け加えた。
今回の報告では、米のブランド145のサンプルについて重金属の含まれる量を分析した。製品の生産国はインド、イタリア、タイ、米国で、いずれも米国内で市販されている。
またアマランスや大麦、蕎麦(そば)、ブルグル、クスクス、ファッロ、黍(きび)など9種の古代穀物を使用した66のサンプルも同様に調べた。
その結果、市販の米には古代穀物の28倍のヒ素が含まれていることが分かった。古代穀物には米より1.5倍多くカドミウムが含まれていたが、それでも全体的な重金属の水準は9種の古代穀物の方が市販の米よりも3倍低かった。
市販の米のサンプルは、米国南東部産の玄米の重金属濃度が151ppb。このうちヒ素は129ppbだった。主にリゾットに使用されるイタリア産アルボリオ米は全体の重金属濃度142ppb中、ヒ素が101ppb。米国南東部産の精白米は全体の重金属濃度118ppbに対し、ヒ素が95ppbだった。
インド産のバスマティ米、タイ産のジャスミン米、カリフォルニア米のカルローズの重金属濃度は、FDAが乳児用米シリアルに設定した100ppbと同じか、これを下回った。
カドミウムの濃度は、イタリア産アルボリオ米とインド産バスマティ米で特に高い数値が検出された。
全体の重金属濃度はカリフォルニア米がヒ素55ppbを含む65ppbと最も低く、全般的に暴露を低減する上で優れた選択肢になると、フーリハン氏は語った。
この他にも報告では、米を調理する際、パスタのように米1カップに対して水6~10カップで茹(ゆ)で、食べる前に余分な湯を切れば米に含まれるヒ素を最大60%取り除けるとしている。調理前の洗米だけではそうした効果は得られないという。
さらに多くのヒ素を取り除くには米を30分、もしくは一晩水につけ、調理前に水を切る方法もあるという。
またビタミンBやカルシウム、亜鉛、ビタミンCなどの栄養素は、混入物質の体への吸収を抑え、迅速な排出に寄与すると報告は指摘。赤身肉やヨーグルト、チーズ、葉物野菜、ブロッコリー、豆類、柑橘(かんきつ)類などにそうした栄養素が含まれているとした。