東京・表参道で宝石店強盗のイギリス人容疑者2人 日本への身柄引き渡し妥当と英判事


2015年11月に東京の高級宝石店を強盗した疑いで国際指名手配されたイギリス人男性2人が、イギリスでの画期的な判決に伴い、日本に身柄を引き渡される可能性がある。

「表参道ヒルズ」内の宝石店「ハリー・ウィンストン」で顧客を装い、1億600万円相当の貴金属を盗んだとされるケイン・ライト容疑者(28)とジョー・チャペル容疑者(38)、さらに3人目の男性について、日本の警視庁は強盗致傷容疑などで国際指名手配し、10年近くにわたり身柄引き渡しを求めてきた。

イングランドとウェールズで主に身柄引き渡し事件などの審理を担当する、ゴールドスプリング首席治安判事は16日、両容疑者の身柄引き渡しに関する異議申し立てを棄却した。両容疑者を日本当局に引き渡すかどうかは今後、イヴェット・クーパー内相が28日以内に判断することになる。

イギリスと日本の間では、犯罪人引渡し条約が結ばれていない。このため、日本がイギリスから逃亡犯を受け入れるのは初めてとなる。

日本側の身柄引き渡し要請は当初、退けられたものの、日本政府が控訴。今年1月にロンドンの高等法院は、審理を下級審に差し戻す決定をしていた。

16日の判決文をBBCが確認したところ、ロンドン出身の両容疑者は、日本の刑務所の環境が「恣意(しい)的かつ過剰で、国際基準に違反している」として懸念を表明していた。

日本政府は、両容疑者の主張は「法的にも事実の上でも根本的に欠陥がある」と反論していた。

ゴールドスプリング判事は、チャペル容疑者の罪状には「一応の自明性」があり、一見すると起訴を裏付ける十分な証拠があると認定。さらに、日本への身柄引き渡しは両容疑者の人権と「両立する」と判断した。

これに先立ちロンドンの高等法院は、両容疑者のほか、ライト容疑者の父親だと記載される「ダニエル・ケリー」という3人目の男性を引き渡すよう、日本政府が請求した内容について、日本側に請求の根拠があると判決を下していた。

ケリー容疑者に対する日本の裁判は、今月末に審理が予定されている。ケリー容疑者については、殺人共謀罪の裁判が優先されているため、同容疑者はこれまでの身柄引き渡し審理には出廷していなかった。

高等法院の1月の判決では、2015年11月の宝石店襲撃事件と同じ時期にケリー、ライト、チャペルの3容疑者が東京を訪れていたと、日本側が「幅広い証拠に基づき」立証したと認めている。

日本の警視庁の調べによると、複数の防犯カメラが、3人全員が2015年11月18日に成田国際空港に到着し、都内の「エルム・シェアハウス」に滞在する様子を捉えていた。

日本の捜査当局は、3人が表参道ヒルズのハリー・ウィンストン支店まで「タクシーに乗った」ことを示す捜査記録をロンドンの高等法院に提出。 逃走の際、3人はアルマーニのジャケットなど数点の物品を置いて逃げたという。

捜査幹部は、「ゴーグルは店に残されており、強盗が現場から逃走した経路にはジャケットが残されていた」と説明した。

東京歯科大学の教授は、成田空港で撮影された電子パスポートの画像と、ハリー・ウィンストンの店舗で撮影された男性3人の防犯カメラの静止画を比較。捜査当局は高等法院に提出した資料で、 この「専門家」の調査結果を引用し、「比較対象となる2人(または3人)が同一人物である可能性は極めて高い」と述べた。

捜査報告書はこのほか、DNAの一致に加え、「3人が滞在していた物件で見つかったガラスの破片が、宝石店の陳列ケースのガラスと一致したという専門家の証拠」も提示した。

両容疑者の弁護士は高等法院で、この捜査資料の内容を争った。

日本政府は、容疑者3人が弁護士と内密に相談する権利や、事情聴取の様子を録音する権利、黙秘権を保証すると述べている。

ライト容疑者はかつて、英サッカー・プレミア・リーグのウェストハム・ユナイテッドやブレントフォードで将来を期待される選手だった。スイスの博物館から盗まれた中国・明時代の花瓶を売ろうとした罪で2023年に有罪判決を受け、服役した。

今後どのような上訴が提起されるかによるものの、クーパー内相はチャペル容疑者とライト容疑者を日本に引き渡すか、あるいは日本政府の要請を拒否するか、28日以内に決める必要がある。

(英語記事 Brits can be extradited over Tokyo jewellery heist)

(c) BBC News



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