解明された「三毛猫の謎」、オレンジの毛色はどうやって作られるか


【写真】私たちの身近にいるイエネコの先祖、リビアヤマネコ

 半世紀以上、誰も手を付けなかった猫の毛色をつかさどる遺伝子を突きとめるため、クラウドファンディングで資金を募って挑んだ九州大学の佐々木裕之名誉教授は、ついにその遺伝子を見付けた。まったく同時に、アメリカの研究チームも同じ謎を解明したと発表した。

 どんな仕組みで猫の毛色は作られるのか。なぜ、2つの研究チームが同時に同じ謎を解明したのか――これはぜひ、佐々木氏に聞かねばなるまい。

 (参考)三毛猫はほぼ全てがメス、ではあの模様は遺伝的にどうやって決まっているのか(2023.4.28)

■ 猫の明るい茶色は遺伝子変異によって生まれる

 ――ついに猫の毛色を作る遺伝子の仕組みが見付かったそうですね。

 佐々木裕之氏(以下、佐々木) はい。猫さんのX染色体にある「ARHGAP36」という遺伝子が、黒い色素を作ることに関わっていることがわかりました。「ARHGAP36」は、ちゃんと働いているとユーメラニンという黒い色素が作られます。私たちヒトが日焼けしたりシミになったりするのもユーメラニンによるもので、髪や瞳の色が黒や焦げ茶になるのも同じです。

 猫さんの毛色には、白、黒、焦げ茶と明るい茶色があります。明るい茶色は赤っぽかったり黄色がかったりしていて、英語ではマーマレードやジンジャーと表現することもありますが、ここではオレンジと表現します。オレンジはフェオメラニンという色素で作られ、ヒトの髪であれば赤毛や金髪になり、瞳の色は青、灰色、緑色になります。

 これまでにわかっていたのは、毛色を黒やオレンジにする遺伝子が性染色体であるX染色体上にあることでした。オスの性染色体にはX染色体が1本なので、黒かオレンジどちらかの毛色しかできません。X染色体を2本持っているメスは、両方とも働くと生存に不都合になるので、一方を働かないように「不活性化」します。どちらのX染色体が不活性化するのかはランダムに決まるので、黒とオレンジの毛色が同時に、しかし別の場所に現れるのです。



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