大企業の社員らが入る健康保険組合の平均保険料率が、2025年度に過去最高の9.34%に達する見通しとなりました。高齢者の医療費が増加していることが主な要因で、現役世代が高齢者を支える構図は、ここでも顕著になっています。健康保険の保険料率とは、どのようなものでしょうか。やさしく解説します。
(フロントラインプレス)
■ 「もうやめて」SNSに悲痛な声
「これ以上むしり取られてたまるかよ!」「高齢者を支えているうちに現役世代がクタバリそう」――。
健康保険の平均保険料率が前年度より0.03ポイント上昇し、2025年度は過去最高の9.34%に達するとの見通しが公表されたのは、今年4月下旬のこと。そのニュースが流れると、SNS上には「もうやめて」といった悲痛な声が溢れました。
この数字は、健康保険組合連合会(健保連)が発表しました。健保連に加わる1372健保組合の2025年度予算推計を集計したところ、平均保険料率が過去最高になることが判明した、というのです。
現在の仕組みでは、75歳以上の後期高齢者を支える医療制度は、後期高齢者自身の保険料が約1割、税金が約5割、現役世代の支援金が約4割という構成になっています。現役世代からの支援金の一部は健康保険組合からの拠出金によって賄われていますが、その拠出金が前年度より大きく膨らむことが保険料率アップの要因になりました。
また、健保連の資料によると、2025年度は1372の組合のうち8割近くの1043組合が赤字になる見通しです。組合全体の収支も3年連続の赤字。赤字の総額は3782億円に達すると推計されました。賃上げによって保険料収入は増えるにもかかわらず、赤字は膨らんでしまうのです。
こうした状況について、健保連の幹部は記者発表の席上、「現役世代の負担が重く、高齢者への『仕送り』の割合が高い傾向がずっと続いている。高齢者の医療費への拠出が今のかたちで続くかぎり、今後も保険料率を引き上げていかざるをえない」と発言しました。1947〜1949年に生まれた「団塊の世代」が全員75歳以上の後期高齢者となったことから、現役世代への負担が軽くなる見通しはないとの見方を示したのです。
実際、医療費の増大はすさまじいものがあります。日本全体で2023年度にかかった医療費は前年度より2.9%増え、約48兆円に上ると見込まれています。37兆4000億円だった2010年度と比べると、およそ3割増です。
さらに厳しいのが後期高齢者の医療費で、2023年度はおよそ18兆6000億円に上る見込みです。実に、医療費全体の38.8%を占めているのです。12兆7000億円だった2010年度より46.2%も増えてしまいました。
2025年度の健康保険料率が過去最高になるとのニュースを伝えた際、大手メディアは「働けど稼ぎは医療費に」(日本経済新聞電子版)といった見出しを並べましたが、高齢化は今後もさらに進むため、賃上げ効果も打ち消してしまいそうな状況はしばらく解消されそうにありません。
では、健康保険の保険料率とは、そもそもどのような数値なのでしょうか。