贋作と疑われる土偶が文化庁のサイトに掲載
文化庁のWEBサイト「文化遺産オンライン」に掲載されている土偶は贋作なのではないか――。 『土偶を読むを読む』(文学通信)などの著作があり、縄文文化を紹介するフリーペーパー「縄文ZINE」の編集長を務める望月昭秀氏がXで指摘したところ、大きな反響を呼んだ。この指摘を受け、文化庁はこの土偶を紹介するページを取り消すに至った。
騒動は土偶を所蔵する美術館にも波及した。土偶をサイトに掲載したのは愛知県にある私設美術館「美術の森」である。同館の館長はメディアの取材に対し、土偶が本物であると主張する。しかし、望月氏によれば、同館の土偶の多くは真贋が疑わしいだけでなく、ネットオークションで販売されている“贋作”に作風がよく似ているのだという。
1月21日に放送された「開運! なんでも鑑定団」でも、ネットオークションで購入したという10体の土偶が鑑定され、すべて贋作であった。望月氏によると、「美術の森」が所蔵する土偶と同じ贋作師が作ったものと推測されるという。また、ある出版社が刊行した縄文時代を紹介するムック本にも同様の贋作が掲載された事例があるそうだ。こうした経緯からも、贋作土偶は水面下で広く流通している可能性がある。
完形の土偶は滅多に出土しない
今回、デイリー新潮では望月氏にインタビューを行った。望月氏が同館の土偶を疑わしいと考えたポイントは、ほとんどが驚くほど保存状態がよく、欠けている箇所がない“完品”であることだった。土偶は祭祀に使われていたと考えられる土製の人形だ。長い間土の中に埋まっていたため、割れていたり、破片で出土したりするのが普通なのだという。
「煮炊きなどに用いる土器は生活必需品なので数も多く、縄文時代の遺跡であればどこでも大量に出土するものですが、土偶は数が少なくそうはいきません。たとえ欠片でも土偶が出土しない遺跡の方が圧倒的に多い。そんな中で欠損のない完形の土偶が見つかることはさらに稀です。小型のものなら壊れていないものもありますが、中〜大型ぐらいのサイズだと全国でも100点ほどしかないはずです。ところが、ニュース映像を見ると、私設の美術館にそんな“激レア”な土偶が30〜40点ほどある。これはどう考えてもおかしいのです」
かつて、土偶は世界的なオークション「サザビーズ」にも出品されたことがある。これは著名なコレクターである井上恒一氏の収蔵品だったが、胴体から下がないものだった。完形と呼べるものではないのだが、それでも約2億円で落札されている。このことからも、土偶そのものの希少性がよくわかるのではないか。