従来は「留学するなら大学院から」という考え方が主流だったが、今は有名進学校の「正統派のできる生徒」が海外トップ大学を選ぶという。東大か海外トップ大か。進路を分ける決め手とは――。
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「大谷翔平選手ら日本人メジャーリーガーの活躍も、最初にその道を切り拓いた人たちがいたからこそ。そんな先駆者を一人でも多く生み出していくのが務めだと考えています」
こう話すのは、大手進学塾「東進ハイスクール」(以下、東進)などを運営する「ナガセ」(東京都武蔵野市)の渋川哲矢専務取締役だ。7年連続で800人超の東大現役合格者の輩出を誇る東進が、破格ともいえる海外大学留学支援制度を創設しているのを知る人はそう多くないだろう。
ハーバード大、イェール大、スタンフォード大、ケンブリッジ大学、オックスフォード大など米英のトップレベルの大学に進学する学生を対象に、4年間で一人あたり総額40万ドル(米国の場合)を給付する制度。じつに日本円で約6000万円、国内の新築マンションの平均価格に相当する支給額だ。学費だけで年900万円前後とされる海外大学で生活費込みのサポートを受けられる、まさに「丸抱え」の制度といえる。
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とはいえ、支援対象に選ばれても多くは東大に進学するため、創設当初は海外大学に進学する学生がゼロの年が続いた。転機は2019年、最初の支援生を輩出した。その後はコロナ禍で低迷したものの、ここ数年は志望者も増加傾向にあるという。
海外志向の潮流は有名進学校でも起きている。開成高校(東京都荒川区)OBでもある渋川さんはこう説明する。
「例えば、開成高校のトップ10に入る生徒も『東大オンリー』ではなく、海外のトップ大学を併願するケースが増えています。従来は『留学するなら大学院から』という考え方が主流で、高校を卒業してすぐに海外大学に進むのは少し変わり者のように捉えられていましたが、今は『正統派のできる生徒』が海外大学を選ぶイメージです」