【パリ=三井美奈】日本を訪問中のローマ教皇(法王)フランシスコは24日、長崎市で発表したメッセージで、「核兵器禁止条約」に言及し、核兵器廃絶を訴えた。バチカン(教皇庁)が「核抑止力を初めて違法とみなした」(仏紙フィガロ)もので、歴代教皇の方針から大きく踏み込んだ。
教皇は「国際的な平和と安定は、相互破壊への不安や、壊滅の脅威を土台とした、どんな企てとも相いれない」と発言。カトリック教会は「核兵器禁止条約を含め、核軍縮と核不拡散に関する主要な国際的な法的原則」に基づいて、行動すると述べた。
東西冷戦中、バチカンは抑止力としての核保有を容認していた。1982年、ヨハネ・パウロ2世は国連総会へのメッセージで、核抑止力は「軍縮への道の一段階として、倫理的に認められる」と明記。前教皇ベネディクト16世は2006年、国家が安全保障を核抑止に頼ることは、「災いをもたらし、欺瞞(ぎまん)だ」と批判するにとどまった。
同条約は2017年、国連で採択。核兵器の製造や配備に加え、「使用による威嚇」を禁じた。日本は日米同盟に基づく「米国の核抑止力は必要」として、条約に参加していない。