5月19日、公正取引委員会は日本野球機構(NPB)に対し、独占禁止法違反(不公正な取引方法)のおそれがあるとして警告を出す方針を固めた。ライターの広尾晃さんは「スポーツビジネスが変わる中、NPBはいまだ昭和の感覚でいることが問題だ」という――。
【写真】日本シリーズ優勝決定後、横浜スタジアムのビジョンに表示されたもの
■取材者に対して「お前」と呼ぶ球団
筆者はここ10年、プロ野球の春季キャンプの取材をしている。しかし事前に取材申請をして受付に出向いたにもかかわらず、広報担当者から「だれだお前は! 本当に取材申請してるかどうか、本社に聞くからそこで待ってろ!」と大勢がいる前で、怒鳴られたことがある。
またシーズン中の試合の取材もすることがあるが、球団広報から「お前が移動できるのは、このエリアまで、選手や監督にインタビューしてはいけない。話ができるのは新聞、テレビだけ」とくぎを刺されることがある。
全ての球団ではないが、一部の球団はフリーランスの取材者と「運動記者クラブ」に所属している新聞やテレビの報道陣に、露骨な差別をするのだ。
かといって運動記者クラブの記者が優遇されているかと言えば、そうではない。球団に批判的な記事を書くと、広報担当から嫌味を言われたり「出禁」になる恐れがある。
そうならないまでも、球団の機嫌を損ねると、記者クラブの記者でも選手や監督へのインタビューを禁じられる場合もある。記者たちは球団に気を使いながら取材をしている。
■NPBの「古い体質」
もちろんすべての球団がそうだと言うわけではない。IT系の親会社を持つ球団では、こうしたことはあまり起こらない。IT系の親会社はスポーツビジネスの一環としてメディアを活用していると言う認識がある。
むしろフリーランスの主戦場であるネットメディアは既存メディアより伝搬力が強いことを知っているから「どんどん取材してください」と言われ、球団側から取材提案を受けることもある。
主として親会社の企業文化によるところが大きいが、球団とメディアの関係には、温度差があるのだ。古い体質の球団は「取材させてやる」、新しい体質の球団は「情報発信してもらう」という認識なのだ。
では、そんな12球団を統括するNPB(一般社団法人日本野球機構)はどうか。残念ながら「古い体質」のようだ。