香港では、全18の区議会が設けられている。地域の法律や予算を決める強い権限は持っておらず、公共サービスや福祉といった地域の問題について政府に提言する諮問機関のような役割しかない。だが区議会選は、香港で民意が最も反映されやすい選挙であるため、その役割以上に結果が注目されている。
最大の特徴は、区議会の全479議席のうち452議席を、1人1票の直接選挙(小選挙区制)で選ぶことにある。香港の立法会(議会)は、定数70のうち直接選挙(比例代表制)で選ばれるのは35議席のみ。残る35議席は職業別代表枠で選ばれているが、そのうち30議席は親中派に有利とされる間接選挙だ。さらに香港政府トップの行政長官は、職業別団体の代表や立法会議員らで構成する選挙委員会(定数1200)の投票で選出する。民意は直接反映されていない。
今回の区議会選は全選挙区で民主派と親中派が争う構図となった。現有勢力は親中派が全体で3分の2以上を占めているが、政府への抗議デモが本格化してから5カ月以上が経過した香港住民の民意を知る重要な指標になる。区議会選では18歳以上の香港永住者が選挙権を持っている。
行政長官を選ぶ選挙委員会のうち約1割に相当する117人が区議会議員枠であるため、2022年に予定される次期行政長官選にも、今回の区議会選の結果が一定の影響を与えることになるとみられる。(香港 三塚聖平)