現役首相のような歓待ぶり
政治部デスクが解説する。
「岸田氏は、5月3日から5日間の日程でインドネシアとマレーシアを訪問した。石破茂首相の特使との立場で、インドネシアではプラボウォ大統領と、マレーシアではアンワル首相と会談。いずれも現役の首相のような歓待ぶりでしたよ」
“外交の岸田”の本領発揮か、齋藤健前経済産業相、萩生田光一元自民党政調会長といった大物を伴っての歴訪だった。
連休中の動静を振り返れば、岸田氏は国内でも“露出”に励んでいた。
「4月29日には裕子夫人を伴い、東京ドームで巨人×広島戦をバックネット裏の最前列で観戦。広島選出の岸田氏は筋金入りのカープファンとしても有名で、狙ったのかどうか、テレビ中継ではたびたび夫妻の姿が映し出されていました」
総裁選を見越して支持者集め
その岸田氏は、首相退任から間もない昨年11月に国民の資産運用を後押しする「資産運用立国議員連盟」を、翌12月に日本と東南アジア諸国の脱炭素化を推進する「アジア・ゼロエミッション共同体議員連盟」を立ち上げている。
「本人は表向き“オレは石破政権を支える”と公言していますが、一方で存在のアピールには積極的。これが捲土重来を期したものとみられている」
次期総裁選を見越した支持者集めに積極的だとも。
自民党関係者が言う。
「旧岸田派の議員を中心に、定期的に会合を持っています。昨年の党総裁選で石破さんを支持したことで、高市早苗前経済安全保障担当相を推した麻生太郎元首相との関係が悪化しました。最近は茂木敏充前幹事長も交えた3人の会食に応じるなど、こじれた関係の修復にも努めています」
旧岸田派の“本音”
麻生氏は御年84歳、菅義偉元首相は76歳。その点、岸田氏はまだ67歳だから“キングメーカー”として君臨するより、当選同期の安倍晋三元首相のように再登板を狙っているのか。
「ご本人は色気があるようですが、旧派閥の仲間の多くは“石破さんの次は(同じ岸田派だった)林芳正官房長官にやらせたい”との意向です。岸田さんはそれが気に入らないようで、会合で林さんと顔を合わせても、ぎこちない様子です」
とは旧岸田派議員の一人。
「先の総裁選で、岸田さんの側近の木原誠二選対委員長や村井英樹前官房副長官は小泉進次郎元環境相を支援した。岸田さんも、自分が出られないなら元“同僚”の林さんではなく進次郎氏を推すはず。そうなれば、林シンパが反発して旧岸田派は空中分解ですが」
岸田氏の“再登板”へのハードルは高そうだ。再び先の政治部デスクの解説。
「岸田政権は防衛力強化や原発推進、少子化対策など実績は残したものの、肝心の国民ウケがイマイチでした。石破政権は消費税減税を否定して支持率を下げましたが、岸田氏はいまもSNSなどで“増税メガネ”とのフレーズで批判されている。以前からの財務省寄りの発言も非難の的です」
前述のプロ野球の試合は、広島が延長12回の末にサヨナラ負けを喫した。“持ってる男”でもなさそうで――。
「週刊新潮」2025年5月22日号 掲載
新潮社