東大が今年4月、2027年9月に約70年ぶりとなる新学部「カレッジ・オブ・デザイン」を開設することを発表した。学部と大学院修士課程にまたがり、5年で修士号が取得できる仕組みで、学部長には東大として初の外国人となる英国人のマイルス・ペニントン東大大学院情報学環教授が就任する。1学年の定員は100人。秋入学で学生の半数を海外から受け入れ、全ての授業は英語で行い、研究テーマを学生自身が選ぶという。新学部が誕生した背景と意義、その可能性とは――。
【写真】東大に70年ぶりに新学部誕生!授業はすべて英語で秋入学
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「これまで東大は日本の高校生のための大学でしたが、世界の高校生のための大学になる、ということを名実ともに示す素晴らしい取り組みです。遅きに失したとの声もありますが、これは学部からの留学生受け入れの障壁が高すぎた問題に対する一つのソリューションでもあり、歓迎すべき流れです」
そう評価するのは、元文部科学副大臣で現在、東京大学教授の鈴木寛さんだ。一方で鈴木さんは、「日本人、外国人各50人程度の計100人」という入学定員の設定には物足りなさを感じる、と指摘する。
■東大生カラーがガラリと変わるはず
「東大の1学年はいま約3千人ですが、カレッジ・オブ・デザインの学部生の規模が1千人ぐらいになれば、東大全体を変えるインパクトが生じ、『同質性』も指摘される東大生のカラーもガラリと変わるはずです。しかし、100人規模だと離れ小島みたいになってしまうことを危惧しています」
とはいえ、定員増を検討するにしても先立つ物はお金(予算)。鈴木さんは大学をサッカーチームになぞらえ、「高度人材集約型ソーシャル・サービスである大学も人件費総額がすべて」だと訴える。
「選手や監督の年俸のトータル額が高いサッカーチームほど強いのと同じで、大学も世界から優秀な研究者や教員を集めるには人件費の総額がものを言います。つまり、人件費にどれだけ充てられるかが、大学の教育水準を左右するのが現実です」
国立大学の予算もこれからは国に頼るだけでは限界があり、「社会の協力が不可欠」と鈴木さんは強調する。