全国各地でクマによる被害が深刻化する中、秋田県の鈴木健太知事(50)は10月28日、防衛省を訪問し、小泉進次郎防衛大臣に対しクマの駆除や捕獲に関する自衛隊の支援を要請しました。この要請は、秋田県におけるクマ被害の異常な増加を受けてのことですが、この報道を巡って思わぬ波紋が広がっています。
秋田県のクマ被害と自衛隊への支援要請の背景
秋田県では今年のクマ目撃件数が前年の5倍に達し、被害件数も53件と異例の事態に直面しています。地方自治体単独での対応が限界を迎える中、元自衛官でもある鈴木知事は「自衛隊の力を借りなければ国民の命が守れない」と窮状を訴えました。知事の要望は、銃を使用しない箱わなの設置や運搬、捕獲後の処理など、主に捕獲駆除に対する後方支援が中心だとされています。これは、市民の安全確保が急務であるという切迫した状況を示しています。
秋田県で深刻化するクマ被害の現状を示すイメージ写真
日本経済新聞のリード文が招いた「憲法9条」論争
しかし、この重要なニュースを報じた日本経済新聞(電子版)が10月28日にX(旧Twitter)で配信したリード文が、大きな物議を醸しました。「自衛隊の武器使用を巡っては、憲法9条の規定もあり厳しく制限されています。犠牲者数が過去最悪となるなか、どのような対応が可能なのでしょうか」という一文が、多くのユーザーから批判を集めたのです。
SNS上では、《熊との戦いがいつから国際紛争になったんですか?》、《憲法9条をまるで理解していませんね。害獣への武器使用は9条とは無関係で、全く別の法的枠組みの問題です》、《日本経済新聞社はクマとの戦いを『国際紛争』として捉えているのか。すごいな。歴史に残る迷記事だろこれ》といった手厳しい指摘が相次ぎました。憲法9条は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定されており、防衛省が発する9条の趣旨や政府見解も、主に国家間の武力行使に関するものであり、獣害対策やクマに関するものではないことは明らかです。
政治家による反応と過去の自衛隊獣害対策
日本経済新聞の報道に対し、立憲民主党の枝野議員も同社の投稿を引用する形で「憲法9条はまったく関係がありません」と反応しました。なぜ憲法9条に触れたのかは不明ですが、この報道が憲法9条が獣害対策の妨げになっているかのような誤解を生んでしまった可能性が指摘されています。
過去には、自衛隊による武器使用を伴う獣害駆除の実績があります。1967年、北海道庁がトド被害に手を焼き自衛隊に協力を要請し、射撃訓練という名目でトドの駆除を実施した事例が代表的です。この際は目標達成には至らなかったものの、自衛隊が害獣駆除に関与した歴史的な一例として知られています。
自衛隊の派遣における課題と市民の声
今回のクマ被害に対する自衛隊の支援は、銃器の使用を伴う駆除ではなく、箱わなの運搬や設置、駆除後の処理といった後方支援が中心となる方向で調整が進められています。しかし、この方針についても市民からは様々な声が上がっています。《丸腰で派遣するのは気の毒》、《後方支援だから熊が来ないとは限らない》など、自衛隊員の安全を懸念する意見や、活用方法に疑問を呈する声も少なくありません。
鈴木知事が訴える「現場の疲弊がピーク」という状況を鑑みると、市民の生活と安全を守るためには、早急かつ柔軟な対応と共に、このような状況に対応できる法整備の両輪が喫緊の課題として求められています。
参考文献
- Yahoo!ニュース
- 日本経済新聞(電子版)X投稿(2023年10月28日)
- 立憲民主党 枝野幸男議員 X投稿(2023年10月28日)





