国会で政治家が居眠りをすると、「けしからん」「仕事をしろ!」と厳しい批判が飛び交う。しかし、アメリカの場合は、議員はそもそも議会にそれほど来ない。アメリカの政治家は仕事をしていないのだろうか。『アメリカの今を知れば、日本と世界が見える 混迷が告げる時代大転換の予兆』(東京書籍)を上梓した早稲田大学教授の中林美恵子氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──日本とアメリカの三権分立を本書の中で比較しています。日米の三権分立には違いがあるのでしょうか?
中林美恵子氏(以下、中林):アメリカは憲法で三権の分立を唱えている国で、日本は敗戦を経て今の憲法になりました。そのため、アメリカの影響を強く受けていますが、アメリカ式の三権分立は日本の議院内閣制には馴染まない部分もあります。
立法府と行政府が限りなく近いのが日本の議院内閣制です。衆議院で多数を取った政党が政権を取り、総理大臣を選出して行政府を支配します。司法府は別としても、こうした関係性を明確に3つに分けるためには、かなり工夫が必要です。
日米の三権分立には実質的な違いがあります。日本では、衆議院議員が総理大臣になることが多いですね。閣僚も議員の中から選ばれます。衆議院の本会議場には、閣僚になった議員のためのデスクもあり、議場にある席には総理大臣の名札も立てられるようになっています。
しかしアメリカでは、上院議員や下院議員が、行政府に転職すると、議員は辞職しなければなりません。行政府と立法府の仕事を兼任してはならないのです。
そして、アメリカでは閣僚に選ばれると、公聴会で身体検査が行われ、その人がそのポジションに適任かどうか、公に議論されます。
──米大統領選では、しばしば負けた候補者が閣僚入りします。裏で人事の取り引きがあるということですよね?
中林:そうですね。候補者たちはまず党内選挙を戦います。これが予備選挙です。
最後は候補者を一本化しなければなりませんから、自分以外の候補者には退いてもらう必要がある。そこで「あなたは今の状況では勝てそうもありませんが、私の応援に回ってくれれば、私が勝った暁には閣僚のポストを用意します」と取り引きすることもあり得るでしょう。
あるいは、予備選挙の経緯から勝者が恩義を感じたり支持者層を広げたりするために、当選後に配慮する場合もあります。
──日本の国会はしばしばスキャンダル追及の場になるが、アメリカの連邦議会ではそのようなことはほとんどないと書かれています。