トランプ米大統領が21日に南アフリカのラマポーザ大統領と会談した際、南アの少数派白人が「迫害」されている根拠として示した映像や写真の中に、誤った内容が含まれていた疑いが浮上している。英BBC放送とロイター通信がそれぞれ分析して報じた。情報の精査や検証が不十分だった可能性がある。
【写真】トランプ氏が会談中に手渡した「記事」とみられる印刷物
会談は約1時間にわたって記者団に公開された。トランプ氏は途中、スタッフに動画の再生を指示し、「白人農民が多数殺害されている」と主張。その後、記事を印刷した文書をいくつも掲げて迫害を訴え、ラマポーザ氏に手渡した。
ホワイトハウスが用意した動画の終盤には、広大な農村風景の中を走る道路の両脇に、白い十字架がずらりと並ぶ場面があった。トランプ氏は「ここは埋葬地だ。1000人以上の白人農民が埋葬されている」と述べ、日曜の朝になると遺族らが祈りのために車で列をなして訪れると紹介した。これに対し、ラマポーザ氏は「これはどこなのか知りたい。私は見たことがない」などと応じた。
BBCは22日、この映像は2020年に白人農家の夫婦が殺害された事件に対する抗議活動の際に撮影されたものだと特定した。主催者の一人は、この場所について「埋葬地ではなく、追悼の場だった」と説明。十字架は、夫婦を追悼するために一時的に立てられたもので、その後撤去されたと語ったという。
一方、ロイター通信は、トランプ氏が会談中に掲げた記事に使用されていた写真が、別の国で撮影された映像から切り出されたものだと報じた。
トランプ氏は「ここ数日の記事だ。人々の死、死」と話しながら、記者団に見えるように次々と文書を掲げた。その中には保守系オンラインメディアの記事もあった。トランプ氏は大きな写真が印刷された文書を掲げ、「これが埋葬地だ。彼らは全員、埋葬されようとしている白人農民だ」などと語った。
しかし、ロイターによると、この写真を含む映像が撮影されたのは、南アフリカではなく、紛争が続くコンゴ民主共和国(旧ザイール)東部の都市ゴマだった。反政府組織による襲撃の後、人道支援団体などが犠牲者を収容し埋葬する様子を、関係者の許可を得て撮影し、2月に配信された。この映像から切り出した写真だという。【ワシントン西田進一郎】