イスラエルのエルサレムで26日、極右集団がパレスチナ人に対して侮辱的な言葉を叫び、暴行を加えた。この日は、1967年の第3次中東戦争で、パレスチナ人が多数を占めていた東エルサレムをイスラエル軍が占領した日で、毎年行進が行われている。
ナショナリストの集団は行進の最中、「アラブ人に死を」といった過激なスローガンや民族主義的な掛け声を繰り返した。
また、旧市街のパレスチナ人居住区に極右のユダヤ人らが流入したことで、暴力行為が発生した。
こうした状況を受けて、イスラエルのヤイル・ラピド前首相は、この行事が「今や憎悪と人種差別の祭典と化している」と非難。「ユダヤ教に対する侮辱で、恥ずべきことだ」と語った。
占領下の東エルサレム旧市街で暴力行為が発生したのは正午過ぎで、イスラエル警察が出動した。
数千人のイスラエル人ナショナリストが、旧市街の主要な入り口の一つであるダマスカス門に集結した。右派活動家らは、「(19)67年にエルサレムは我々の手に、2025年にガザは我々の手に」と書かれた横断幕を掲げた。
目撃者によると、ムスリム地区で営業を続けていたアラブ人商店主らが、若いイスラエル人の集団から嫌がらせを受けたという。
行進の最中には、「お前の村が燃えますように」、「お前の家は我々のものになる」といった掛け声が響き渡った。
イスラエル警察は、特に攻撃的な行進参加者を拘束し、旧市街から退去させたと発表している。
極右政党「ユダヤの力」に所属するイタマル・ベン・グヴィル国家安全保障相は、群衆に向けた演説で、「テロリスト」に対する死刑の適用を求めた。
ベン・グヴィル氏はまた、イスラム教で3番目に聖なる場所とされるアル・アクサ・モスクの構内を訪問した。ユダヤ教では「神殿の丘」として知られるこの場所は、旧約聖書に登場する第一神殿と第二神殿が存在したとされる、ユダヤ教で最も神聖な地とされている。
構内は現在、ヨルダンのイスラム教財団が管理しており、ユダヤ教徒の訪問は認められているものの、礼拝は禁じられている。
ヨルダン川西岸に拠点を置くパレスチナ自治政府の報道官は、エルサレムでの行進およびベン・グヴィル氏によるアル・アクサ訪問を強く非難した。
報道官は声明で、イスラエルのガザでの戦争継続に加え、「アル・アクサ・モスク構内への度重なる侵入や、占領下のエルサレムでイスラエル国旗を掲げるような挑発行為は、地域全体の安定を脅かしている」と警告した。
一方、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は同日朝の閣議で、エルサレムを「統一された、完全な、そしてイスラエルの主権下にある都市」として維持すると述べた。
左派系政治家でイスラエル国防軍(IDF)の元副司令官、ヤイル・ゴラン氏は、旧市街で発生した暴力の映像について「衝撃的だ」と述べ、強い懸念を示した。
ゴラン氏はソーシャルメディアに投稿した声明で、「これが憎悪、人種差別、そしていじめの姿だ」と非難した上で、「我々はすべての人のためのエルサレムのために闘う。ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒、世俗派も宗教派も関係ない」と訴えた。
さらに、「エルサレムは、この街を愛するすべての人のものだ。我々はエルサレムのために闘い、すべての人の都市としての姿を取り戻す」と強調した。
現在は野党に所属するラピド前首相も、「この暴力にはユダヤ的な要素は何もない。こうした事態に沈黙を貫く政府閣僚たちは、この恥ずべき行為に加担している」と述べた。
毎年5月26日には、数千人のイスラエル人がエルサレムと併合された旧市街を行進し、ユダヤ教で最も神聖な祈りの場とされる「西の壁(嘆きの壁)」へと向かう。今年もこの日、壁の前の広場で大きなイスラエル国旗が掲げられた。
この行進は、1967年の第3次中東戦争でイスラエルが東エルサレムを占領し、エルサレムを「統一」したことを記念するもの。イスラエル政府は、エルサレムを「永遠の首都」と位置づけている。
一方で、パレスチナ側もエルサレムを将来の首都とすることを望んでおり、国際社会の多くは、東エルサレムをイスラエル占領下のパレスチナ領と見なしている。
ガザ地区では現在も戦争が続いており、ヨルダン川西岸でも、パレスチナ武装勢力に対するイスラエル軍の軍事作戦が激化している。
イスラエルは、2023年10月7日にハマスが越境攻撃を行い、約1200人を殺害、251人を人質として連れ去ったことを受けて、ガザでの軍事作戦を開始した。現在も57人が拘束されており、そのうち約20人が生存しているとみられている。
ガザのイスラム組織ハマスが運営する保健省によると、同地区ではこれまでに少なくとも5万3939人が殺害されており、うち少なくとも1万6500人が子どもだという。
(英語記事 Far-right marchers attack Palestinians as Israel marks taking of Jerusalem)
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