文在寅氏「四方」手詰まり…ASEANに望み託す 特別首脳会議





22日、韓国・天安で開かれた半導体基板材料の工場の竣工(しゅんこう)式で演説する文在寅大統領(聯合=共同)

 【釜山=桜井紀雄】韓国南部、釜山(プサン)で25日、韓国・東南アジア諸国連合(ASEAN)特別首脳会議が開幕した。文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後、韓国で開かれる最大規模の国際会議で、文大統領は、ASEAN各国やインドとの協力拡大を目指す新南方政策の「中間決算」と位置づける。周辺の主要国との関係がことごとく行き詰まる中、“南”に活路を見いだそうとの狙いだ。

日米中と関係悪化の現実

 文氏は25日、関連会議で演説し、「韓国はASEANと友人の域を越えて『共に成長する共同体』になる」と訴えた。タイのプラユット首相との会談でも「タイは最も重要な新南方政策の協力パートナーだ」と強調した。計9カ国首脳との会談を進め、26日には「韓・ASEAN共同ビジョン声明」の採択を見込んでいる。

 特別会議は、韓国とASEANの対話関係樹立30年を記念して開かれた。

 韓国はこれまで、「4強」と位置づける米国と日本、中国、ロシアを軸に外交を展開してきた。だが、経済的な依存が高まった中国からは、米軍の「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備をめぐって観光や芸能人の中国進出に事実上の制限が加えられ、政治的リスクが顕在化した。同盟国の米国とも、在韓米軍の駐留経費交渉がこじれ、日本とは、いわゆる徴用工判決や輸出管理厳格化で関係が極度に悪化。「4強」に偏った韓国外交の弱みが次々露呈した。

北は「不純なたくらみ」と一蹴

 そうした中、文氏が活路を見いだそうとしているのが、昨年の貿易規模が1500億ドル(約16兆3千億円)を突破し、中国に次ぐ規模を占めるASEAN各国との協力強化だ。関係を「4強」レベルに引き上げることを目標に掲げる。

 狙いは経済にとどまらない。ASEAN各国は総じて北朝鮮と良好な関係を保ち、シンガポールやベトナムは米朝首脳会談の舞台を提供した。南北融和を最重視する文氏は25日の演説でも「朝鮮半島の平和は東アジアの平和だ」と強調し、ASEAN側に対北問題での支持を呼び掛けた。

 今回の会議には北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の出席を招請したが、断られている。北朝鮮はメディアで「新南方政策の片隅に北南関係をはめ込もうとする不純なたくらみ」と批判。本来は東南アジアの首脳らをもてなすべき場さえも南北融和に利用しようという姿勢には、韓国内でも冷ややかな見方が少なくない。



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