2024年には訪日外国人数が3686万人を超え、日々の生活でも外国人が身近になった今日。大阪・関西万博(正式名称は2025年日本国際博覧会)も開幕し、異なる文化背景や価値観をもつ人々と触れ合う機会が増えています。急速にグローバル化が進むなか、互いの違いを知らなかったばかりに思わぬ誤解を生むことも……。
長年、異文化理解・コミュニケーションをテーマに教育活動を行ってきた東京外国語大学教授・岡田昭人氏が「贈り物のタブー(贈ってはいけない)」について解説します。
※本稿は『教養としての「異文化理解」』の一部を抜粋・再編集しています
■ところ変われば価値観も異なる
異文化理解は、単なる知識として文化の違いを知るだけでなく、相互の価値観や行動を尊重し、共感を育むことを目指します。それは、個人レベルでの人間関係を円滑にするだけでなく、国際的なビジネスや外交、教育の場においても重要なスキルです。
例えば、日本には、お中元やお歳暮といった、季節の贈り物(ギフト、プレゼント)の習慣があります。これは感謝やお礼の気持ちを示すためのもので、私たち日本人は贈り物の中身だけでなく、包装や渡し方にも非常にこだわります。
贈り物を渡す際は、日本では紙袋に入れたまま丁寧に手渡すことが通常です。ここには控えめで慎ましさを大切にする日本の文化が表れています。包装紙やリボンにも細かい注意が払われており、美しく丁寧な包装が贈り物全体の印象を左右する重要な要素となっています。受け手も、日本ではもらったものをすぐに見ないことが多くあります。
一方、アメリカやヨーロッパでは、贈り物を渡されたとき、その場ですぐに開けることが一般的です。これは、贈り主に対して感謝や喜びをリアルタイムで伝えるためです。贈り物を開けた瞬間の表情や反応が重要視され、驚きや喜びを素直に表現することで、贈り主への感謝の気持ちが伝わることが期待されます。
アメリカには、クリスマスの朝に家族全員が一斉にプレゼントを開け、そのリアクションを楽しむという文化もあります。このように、贈り物の渡し方や反応の仕方には、国ごとに大きな違いが見られます。