「台湾侵攻のリハーサル」化した中国の演習、有事に備え米海兵隊は“切り札”配備、現実味増す「アジア版NATO」創設


■ 台湾海峡の中間線は完全に無視

 [ロンドン発]5月27日から28日にかけ、台湾国防部は中国人民解放軍による台湾周辺での軍事活動の急増を報告した。航空機の92回出撃と複数の海軍艦艇が確認され、航空機出撃のうち74回が台湾海峡の中間線を越えて防空識別圏(ADIZ)に侵入した。

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 人民解放軍空・海軍合同演習の一環とみられる。台湾国防部のX(旧ツイッター)によると、27日午前零時〜同6時に台湾周辺で航空機の34回出撃、海軍の艦艇9隻、公船1隻を確認した。航空機は34回とも中間線を越えて台湾の北部、南西部、南東部のADIZに入った。

 午前8時15分以降にも、戦闘爆撃機J-16、第3世代の早期警戒管制機KJ-500を含む航空機の27回出撃を確認。そのうち18回が中間線を越えて台湾の北部、中部、東部、南西部のADIZに侵入。軍事衝突を防ぐ非公式な境界線として機能していた中間線は完全に無視されている。

 28日午前零時〜同6時前に航空機の31回出撃、海軍の艦艇9隻、公船1隻を確認。航空機出撃の22回が中間線を越えて台湾の北部、中部、南西部、東部のADIZに入った。台湾周辺における人民解放軍の活動は過去5年間で激しさを一気に増している。

 「台湾同胞に告げる書」40周年の2019年1月、中国の習近平国家主席は「平和統一のための最大の誠意と努力を尽くすが、あらゆる必要な措置をとるという選択肢を放棄するものではない。外部勢力の干渉や台湾独立を求める分裂勢力とその活動には特にそうである」と宣言した。

 それまでの中国は対外的に「平和統一」を強調してきたが、習氏は統一を「中国の歴史的任務」であり「中国の偉大な復興」に不可欠と位置付け、「武力行使を放棄するとは約束しない」と軍事力行使の可能性に言及した。

 翌20年に人民解放軍の航空機が台湾のADIZに入った回数は月10回未満だったが、今年にはその回数は月245回以上に急増している。人民解放軍の航空活動の活発化は台湾に圧力をかけ、軍事的即応性を示すための広範な戦略の一環である。

 人民解放軍はJ-20など第5世代戦闘機の開発、空中給油活動の拡大、太平洋につながる宮古海峡やバシー海峡といった戦略的水路における海軍のプレゼンスを強化するなど迅速な展開能力を強化してきた。これにより最小限の準備時間で台湾周辺での作戦を実施できるようになった。



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