「権力格差」を無視し、女性側に心理的圧力
元タレントの中居正広氏(52)の代理人弁護士が30日、フジテレビの第三者委員会(以下、第三者委)に対して調査資料の開示を求める新文書を公表した。その中で中居氏側は第三者委の報告書を「愕然とした」「だまし討ち」などと厳しく批判したが、元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は、中居氏側による主張の「法的な弱み」を指摘した。
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中居氏側からの文書はこれが3通目。狙いが分かった気がした。
この文書の真の目的は法的主張ではなく、中居氏の言い分を拡散して世論の反応を見る「アドバルーン」なのではないか。なぜなら、8ページにおよぶ今回の文書の内容は、法的には「理不尽」だからだ。
まずこの文書は、中居氏と女性の間の出来事を「業務の延長線上」とした第三者委の認定に抗議し「中居氏と女性は家族やプライベートの出来事に関して様々なやりとりもあり、メールで『勇気づけられた』等のお礼をもらうような関係でもありました」などと主張している。
だが、「業務の延長線上」かどうかという議論は、中居氏と女性のトラブルに、フジテレビという会社が対応すべきだったかを検討するためのものだ。2人のトラブルが業務と全く関係しない「プライベート」なら会社から離れた事案だが、会社の有力取引先と社員という「権力格差」が影響したトラブルなら「業務の延長線上」として会社も対応すべきだというのが第三者委の考え方だった。この議論に中居氏が関係してくるのは、中居氏と同社元女性アナウンサーの間に業務上の「権力格差」があったかどうかという点。第三者委はこれを肯定して、事案を「業務の延長線上」と認定した。
これに対して、中居氏側は今回の文書で「中居氏は、フジテレビの職員ではなく、相手方女性の上司でもありません」と主張しているが、それはピントがずれた反論だ。一方で「女性との権力格差」という肝心の点については、中居氏側は何も述べていない。また、中居氏側は「女性からメールでお礼をもらう関係」と言うが、それを根拠に「この女性は業務とは全く別に、プライベートで自分に好意があったはず」と主張しているなら、「社交辞令」という言葉を辞書で調べた方がよい。「権力格差」がある相手の場合、一見は親しさを感じるメッセージでも「割り引いて」読まなければ、間違いの基になる。
結局、「業務の延長線上」に関する中居氏側の主張は「権力格差」という肝心の問題を無視していて、合理的な内容になっていない。その一方でメールの内容を敢えて公表し、女性側に心理的圧力を与えるものになっていると思う。