10万円金貨が記録的な高値に
不安定な社会情勢を反映した現物資産への関心の高まりからか、金の歴史的な価格高騰がとまらない。現在の金相場は1gあたり1万7000円の大台を突破。高騰を受けて、商店街の空きテナントには金地金や貴金属の買い取り専門店が相次いで出店している。また、これを機に金投資に取り組む人も増えるなど、空前の金ブームに沸いているのだ。
そんななかで注目が集まっているのが、1986〜87年に発行された「天皇陛下御在位60周年記念」と、1990年に発行された「天皇陛下御即位記念」の10万円金貨である。5月20日放送の「開運! なんでも鑑定団」でも紹介されて話題になったが、実はこの金貨、かつてはプレミアもつかず、“邪魔者”扱いされる不遇の存在だった。
製造時は地金の価値が3〜4万円程度だったにも関わらず、それを10万円という額面で流通させたのだから、“ぼったくり金貨”と呼ばれるのも無理はなかった。それゆえ、10年ほど前まではコイン専門店でも買い取りを断るケースが多く、持ち込んでも「銀行で両替してください」と言われることがほとんどだったのである。
そんな不人気金貨が、金相場の高騰に伴い、扱われ方が一変した。業者の買い取り価格が「天皇陛下御在位60周年記念」は30万円、「天皇陛下御即位記念」は40万円をゆうに超えている。もともとデザインも美しいため、コレクションとして保有する人が増えている。両替を勧められた金貨が、日本有数の“プレミア硬貨”の一つになったのだから、既に両替してしまい、悔しい思いをしている人もいるかもしれない。
不人気コインが大人気に
そんな10万円金貨だが、人気の高まりとともに“偽造”が相次ぎ、問題になっているという。特に、ブランド品の買い取り専門店に持ち込まれる例が多いようだ。偽造の手口はかなり巧妙で、3Dプリンターを使用して精巧に作ったものも珍しくないという。また、金地金でも増えているのがタングステンで作られた偽物だ。タングステンは金と比重が似ている金属であり、機械を使った鑑定が難しい。
今回の偽金貨は、主に買い取り専門店を騙そうとする手口と考えられる。何しろ、1枚当たり30万円以上で買い取ってもらえるのだから、一軒でも騙すことができれば大きいというわけだ。また、実物を確認できないフリマサイトなどを通じ、コレクターも騙される可能性は高い。コイン専門店「銀座コイン」の竹内三浩氏がこのように指摘する。
「当店に10万円金貨の偽物が持ち込まれた例は、今までにありません。私どもは表面の刻印の出来など、細部を見れば真贋はわかります。ただ、わざと汚れをつけたりして、本物っぽく見せているものもあるため、一般の方が見分けるのはなかなか難しいと思います。フリマサイトなどで扱われている金貨には偽物が含まれている可能性がかなり高く、注意が必要だと思います」
取材をすると、どうもコイン専門店ではない買い取り業者のほうが狙われやすいようである。担当者がコインの知識をあまり身に付けないまま、フランチャイズで経営しているケースも少なくないため、ターゲットにされやすいと思われる。