韓国を「親日・反日」で語ることの何が問題か。二元論で報じてきたメディアの責任と、その弊害【韓国大統領選】


その中で目につくのは「親日」や「反日」といった言葉だ。民主化後初めてとなる非常戒厳令を出し罷免された尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領を「親日」と呼び、政権交代で「反日に戻るか」といった見出しの記事もある。

しかし、こうした言説は、韓国社会への理解を妨げたり、日本による植民地支配の歴史を軽視したりすることに繋がってはいないだろうか。日本では「日本に友好的」といった意味合いで使われる「親日」も、韓国では植民地期に日本統治に加担した人物を指し、批判的に使われる。

「親日」や「反日」という言葉の問題点とは何か。日本に対して「親」か「反」かで二分する言説が見えにくくさせている、韓国の民主化の歴史やデモの役割とは。韓国の民主化運動を研究してきた、東京大学東洋文化研究所教授の真鍋祐子さんに聞いた。(取材・文=若田悠希/ハフポスト日本版)

「親日か反日か」で韓国を語ること

「親日」「反日」は、日本中心的で稚拙な二元論にすぎず、韓国という国への理解を妨げる言葉です。

2012年の大統領選の時、あるニュース番組で、文在寅(ムン・ジェイン)は「反日」で朴槿恵(パク・クネ)は「友好的」だとフリップにはっきりと書かれていたのを見て唖然としました。責任意識を持って発信してきた韓国専門の研究者は多くいます。しかし、テレビなどの影響力の大きなメディアで朝鮮半島の専門家でもない人がコメントする状況が長く続いてきたことに、非常に歯痒い思いでいます。

日韓関係を、日本の植民地支配が引き起こした歴史問題を抜きに語ることはできません。そこには一人一人の被害者、犠牲者がおり、国家間の折衝だけでどうこうできる問題ではありません。報道においても「外交」や「国際政治」だけではなく、人権の視点で考えることが重要です。

──日韓関係の報道で、日本の朝鮮植民地支配への言及が十分ではないケースも多いです。

日本の加害の歴史と、それに伴う責任を軽んじたり否定したりすること自体が根治されるべきです。

日本軍「慰安婦」問題や、徴用工問題で被害に遭われた人が、過去の清算を求めることや、政府がそれを支援することがなぜ「反日」なのでしょうか。実際に起こったことをなかったことにしてほしくない、自身の名誉を回復してほしいと賠償を求めるのは、人権の観点から当たり前の要求です。

日本からすれば「韓国人はいつまでも歴史問題を蒸し返している」「対日強硬路線だ」と見えているのかもしれませんが、被害者がなぜそのように言うのか、韓国側の歴史的、社会的文脈に立って捉える、複眼的なものの見方が報道にも求められます。



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