辞令のまま異動を繰り返した40代vs.「配属ガチャは嫌」で職場を選ぶ20代 「キャリア権」に見る働きかたの世代間ギャップ


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(前後編の後編)

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※この記事は『若者が去っていく職場』(上田晶美著、草思社)の内容をもとに、一部を抜粋/編集してお伝えしています。

キャリア権と配属ガチャと異動ガチャ

 会社には「人事権」があり、社員は「人事異動」について希望は言えても、従うしかないのが通常です。希望に合わなくても、営業から企画にとか、東京から大阪になど、本人の希望とは関係なく、異動させられます。

 会社側は人員配置において、本人の希望よりも会社の都合を優先します。マンネリ化を防ぎ、または業者との癒着を防ぐためにも人事異動は数年に1〜2回、行われるのが常です。しかし、会社の人事異動に従っていると、自分のキャリアを築いていくのは難しくなります。自分でキャリアを築く権利、それが「キャリア権」です。

 多くの経験を積んでゼネラリストになっていくのも良し、一つの道を究めるのも良し。それらは個人に決定する権利があるのではないか、という考え方です。

 リストラの嵐が吹き荒れた1990年代後半、この期に及んで会社を離れ、転職しろと言われても、自分のキャリアを積み上げるという発想がなく、会社に言われるままに異動してバラバラなキャリアになっており、自分の何を生かしてアピールし転職すればよいかわからない、という相談をよく受けました。

 45歳女性の例です。

「会社がM&Aで統合されるため、リストラ対象になりました。今まで営業畑で来ましたが、退職を断ったところ、履歴書の中に『簿記2級』という資格が書いてあったということで、経理に行けという辞令が出ました。そんな資格は20年前に取ったものだし、書いたことも忘れていました。もちろん経理の経験はゼロです。経理も若いうちなら行っても良かったと思っていますが、会社に言われるままに20数年働いてきたのに、ここで投げ出されて悔しい思いです」

 M&Aでやむを得ない状況ではありますが、本人の希望も聞かず、いきなり営業から経理というのは実質、退職勧奨のようなものです。仕事内容が違いすぎて、20年間のキャリアがもったいなく感じます。



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