韓国の人気男性グループEXOの元メンバーであるタオ氏(本名:黄子韜)が、中国で自身の生理用品ブランドを立ち上げ、大きな成功を収めている。これは単なるビジネスの話題にとどまらず、中国国内で発生した社会問題に対する彼の対応として、幅広い注目を集めている。香港の有力英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)が5月27日(現地時間)に報じた内容によると、タオ氏の新たな挑戦は、特に女性用製品の分野で、誠実さと責任感を示すものとして好意的に受け止められている。
ライブ配信で驚異的な売上
タオ氏は5月18日、自身の生理用ナプキン工場の様子をライブ配信で紹介した。配信プラットフォーム「抖音」を通じて、ナプキン62枚入り1箱を49.8元(約1000円)で販売したところ、驚くべきことに配信開始からわずか30分で45万箱が完売した。この短時間での売り上げは2250万元(約4億4950万円)に達し、その影響力の大きさを改めて示した。
また、これに先立つ4月11日の配信でも、体験用ナプキンボックス4万9500個を1個あたり0.01元という破格の値段で販売し、こちらもわずか1分で完売するという人気ぶりを見せていた。これらの初期の成功が、今回の本格的な販売への期待を高めていた形だ。
事業開始の背景:中国「再利用ナプキン」事件
タオ氏がこの生理用品事業に参入した背景には、中国国内で今年3月に大きな波紋を呼んだ「再利用ナプキン」事件がある。一部メーカーが、使用済みの生理用ナプキンや乳児用おむつを不衛生な状態で回収し、再包装して新品として高値で販売していたという衝撃的な事実が発覚した。この事件は消費者の衛生と安全に対する不安を煽り、中国社会で激しい批判を巻き起こした。
タオ氏はこの事件を強く非難し、自らこの問題解決に貢献することを決意した。単なる批判にとどまらず、具体的な行動を起こす道を選んだのだ。
独自工場設立とブランド「Domyway」
「再利用ナプキン」事件を受けて、タオ氏は約2億7500万元(約55億円)を投じて独自の工場を買収した。そして、衛生基準に合致する最新設備を整え、自社ブランド「Domyway」を立ち上げた。この巨額の投資は、彼がいかにこの事業に真剣に取り組んでいるかを示している。
ブランドの開発にあたっては、パートナーである徐芸洋氏が大きな支えとなったことも明かされている。タオ氏は「妻が実際に3~4タイプの製品を試用してくれた」と述べ、女性ユーザーの視点を取り入れた製品開発を行ったことを強調した。彼は自身の製品について「完璧とは言えないかもしれないが、絶対に清潔で安全だ」と、その衛生管理への徹底的なこだわりを表明した。
モニターに工場の様子を映し出し、生理用品ブランド「Domyway」を紹介するタオ氏(中国の動画プラットフォーム「抖音」ライブ配信より)
企業家としての新たな決意と中国での反響
タオ氏は、この生理用品事業を始めた動機について、「利益のためではなく、女性に対する責任感からこの事業を始めた」と語っている。そして、「私はもはや単なる芸能人ではなく、企業家として見てほしい」と、自身のキャリアにおける新たなステージへの意欲をにじませた。
中国国内では、タオ氏のこの取り組みが大きな注目を集めている。SNS上の関連キーワードはすでに閲覧数1億回を超え、活発な議論が交わされている。SCMPによると、現地のネットユーザーの間では、「影響力を持つタオが女性のための産業に貢献した」という点で、好意的に受け止められている意見が多い。あるユーザーは「彼のファンではないが、誠実さと責任感に感動した」と評価し、別のユーザーは「この業界の変革を自ら主導した彼を称賛する」とコメントしている。
一方で、「男性に本当に女性のニーズが理解できるのか」といった疑問や慎重な見方も一部から出ていることも報じられている。しかし全体としては、社会問題への対応としての彼の行動が高く評価されている傾向にある。
黄子韜の経歴
タオ氏こと黄子韜は、中国山東省出身。2015年にEXOを脱退後、中国に帰国し、俳優や歌手として活動を続けている。2020年には中国有数の富豪だった父親が死去し、約30億ドル(約4500億円)とも言われる莫大な財産を相続したことでも世間の注目を集めた人物だ。
結論
タオ氏の生理用品事業への参入は、単なる有名人の副業ではなく、中国で発生した深刻な社会問題に対する強い責任感と具体的な行動が結びついたものである。彼の莫大な財産と影響力を活用し、衛生基準の高い製品を提供しようとする姿勢は、多くの中国国民から称賛を集めている。この取り組みが、中国の生理用品業界全体の品質向上と、女性の健康・安全への意識向上にどのように貢献していくか、今後の動向が注目される。
参照元:
- KOREA WAVE/AFPBB News
- Yahoo!ニュース – EXO元タオ、生理用品事業で大成功…わずか30分で「4.5億円」売り上げも=韓国報道
- South China Morning Post (SCMP)