日本の出生数、初の70万人割れ:想定を超える少子化の加速と対策の評価

厚生労働省が4日に公表した2024年の「人口動態統計月報年計(概数)」によると、日本国内で生まれた日本人の子どもの数は68万6061人となり、前年から4万1227人の大幅な減少を記録しました。これは統計開始以来初めて70万人を下回る事態であり、出生数は9年連続の減少となります。都道府県別に見ても全ての都道府県で減少しており、日本の少子化の進行が顕著となっています。過去に100万人を下回ったのが2016年、90万人割れが2019年、80万人割れが2022年でした。さらに、年間の出生数減少幅は拡大傾向にあり、少子化に歯止めがかかるどころか、その傾向は年々加速しています。

想定を上回る少子化の進行

国立社会保障・人口問題研究所が2023年に発表した「日本の将来推計人口(令和5年推計)」の中位推計では、2024年の日本人の出生数を75万5263人と予測していました。しかし、実際の出生数はこれを6万9202人も下回る結果となりました。また、初めて70万人を割るのが2038年、68万人台になるのが2039年と推計されていたことを踏まえると、少子化は国の想定よりも約15年も早く進んでいることになります。現実の出生数は、中位推計から大きく乖離し、より厳しい低位推計(66万8254人)に近い水準となっています。こうした異次元ともいえる少子化の現状が続けば、現役世代が社会保険料を負担し高齢世代が給付を受ける賦課方式で運営される日本の社会保障制度の持続可能性が危ぶまれます。

日本の年間出生数と将来推計人口(中位推計・低位推計)の推移を示すグラフ。実際の出生数が予測を下回り、少子化が想定より早く進んでいる様子を表す。日本の年間出生数と将来推計人口(中位推計・低位推計)の推移を示すグラフ。実際の出生数が予測を下回り、少子化が想定より早く進んでいる様子を表す。

過去30年の少子化対策とその評価

日本において少子化対策が本格化したのは、1990年のいわゆる「1.57ショック」が契機とされています。これは合計特殊出生率が過去最低を更新した出来事です。その後、1994年の文部・厚生・労働・建設各大臣合意を経て、1995年から「子育て支援のための総合計画(通称エンゼルプラン)」として具体的な取り組みが始まりました。しかし、これまでに数多くの少子化対策が実行されてきたにもかかわらず、実はその政策効果が個別に検証されたことは一度もありませんでした。厳しい言い方をすれば、効果検証なきまま、財源を投入して従来の対策を機械的に踏襲・拡充してきたに過ぎないのです。その帰結が、今回の出生数70万人割れという衝撃的な現実です。過去30年間における政府の少子化対策を評価するなら、筆者の分析としては「落第」と言わざるを得ません。この30年間で出生数は約55万人減少し、合計特殊出生率も「低出生率の罠」の目安とされる1.50を大きく下回る1.15にとどまっています。少子化に歯止めがかかるどころか、反転の兆しさえ見えません。さらに、この間、家族向け社会支出は1.8兆円から10.7兆円へと約6倍に増加しています。この事実からも、少子化対策の成否は、単に投入される金額の多寡に相関するものではないことが示唆されます。[internal_links]

厚生労働省が公表した最新の人口動態統計は、日本の少子化が予測をはるかに超えるスピードで進行している現実を突きつけました。統計開始以来初めてとなる出生数70万人割れは、過去30年にわたる少子化対策が、巨額の予算投入にもかかわらず期待された効果を上げてこなかったことの何よりの証左です。現状のままでは、日本の社会構造や社会保障制度の維持が困難になることは明白であり、抜本的かつ効果的な少子化対策の再構築が喫緊の課題となっています。

出典:Yahoo!ニュース / Wedge