これほどの重い結論があろうか。千葉県野田市の小学4年、当時10歳の栗原心愛(みあ)さんの虐待死事件をめぐり、県の検証委員会が報告書をまとめ、「救える命だった」と結論づけた。
市、児童相談所、小学校、教育委員会などの一連の対応では「ミスがミスを呼び、リスク判断が不十分なまま一時保護が解除され、漫然と推移した末に痛ましい結果を招いた」とされた。
関係者が寄ってたかって少女を最悪の結果へと押しやったのである。痛切な悔恨と真摯(しんし)な反省を、広く全国の関係者が共有しなければならない。
報告書は児相の人員増や研修を充実させることを提言している。だが、増員は一朝一夕には進まない。まずは全ての大人が、虐待児童を救うための決意を新たにすることから始めるべきである。
心愛さんは小学校のアンケートで父親の暴力を訴え、県柏児童相談所が一時保護した。
保護中には児童心理司に父親からズボンを下ろされるなど性的虐待の疑いがある行為をされたことも明かした。
医師は心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断し、「家族の同居は困難」と指摘したが、児相は一時保護を解除した。
「心愛さんの気持ちや性的虐待を踏まえれば、この時点で一時保護を解除すべきではなかった」との指摘は当然である。
市教育委員会は父親の求めに応じ、自身の暴力を訴えたアンケート回答のコピーを渡した。報告書は「心愛さんの安全を脅かす危惧があることは理解できたはずだ」と非難している。「勇気を持って訴えた心愛さんは、何としても守られるべきだった」のである。
検証委の委員長を務めた「子どもの虹情報研修センター」の川崎二三彦センター長は児相の強化について「人員を増やすという大前提はあるが、基本が周知されていない職員が対応しているということもあるので、体制の整備と強化の2つが必要。促成栽培のように職員は育たない」と述べた。
虐待対応の最優先事項は、子供の安全確保である。根拠のない楽観や、保護者との関係性を配慮しすぎて介入や保護の判断が遅れれば、重大な結果を招く。
心愛さんの事件では、この大原則が度々おろそかにされた。最大の反省点である。