苦境でも「悩まない人」になるには? 不自由を楽しむ考え方

現代社会は予測不能な出来事が多く、苦境や困難に直面することも少なくありません。そうした状況で、すぐに悩んでしまう人もいれば、驚くほど悩まない人もいます。一体、その違いはどこにあるのでしょうか。今回は、12歳から6年間を修道院で過ごし、あらゆることが制限された暮らしの中で「しんどい現実に悩まなくなる考え方」を身につけた書籍『不自由から学べること』の著者・川原マリアさんと、14年にわたり会社を経営し、『ブレずに「やりたいこと」で食べていく起業』を執筆した株式会社和える代表・矢島里佳さんの対談から、困難な時代を生き抜くための悩まない生き方と考え方を探ります。

軸を持って「流される」ことの重要性

矢島氏は、14年間会社を経営する中で、多くの困難に直面してきた経験から、「大事なのは『流されないこと』ではなく、『軸を持って流される』ことだ」と語ります。変化の激しい時代において、完全に流されずにいるのは不可能であり、自分の中にブレないがあれば、多少のことに流されても不安を感じないと言います。矢島氏の軸は、「日本の伝統を次世代につなぐ」こと。この軸があるからこそ、自身の仕事に意味と必要性を感じられ、会社が大変な時でも「お役目がある限り生きていける」と思えたそうです。川原氏も、流されること自体は悪いことではないという点に同意しています。

働く上で守りたい「ご機嫌でいる」という軸

会社としての軸に加え、矢島氏が自身の中で「守りたい軸」として挙げるのが「ご機嫌でいる」ことです。無理な徹夜などができないタイプだからこそ、「仕事は1日8時間で最大限のパフォーマンスを出す」「無理せずご機嫌に生きて働いた方が、自分も周囲も幸せ」という考え方を実践しています。世の中をご機嫌にしたいと願う本人が不機嫌であれば、その言葉に説得力はありません。経営者が掲げる理想や未来は、まず経営者自身が体現する必要があると考えます。真面目でストイックな人ほど、知らず知らずのうちに「社員を養うため」といった目的へとすり替わり、自己犠牲によって不機嫌になり、「なんのために起業したのか」という本来の目的を見失いがちだと指摘します。

自分自身を「縛る」ことから解放される

経営者だけでなく、会社員にも真面目な人ほど不機嫌になりがちな人がいます。矢島氏と川原氏が共通して指摘するのは、こうした人々は自分で作ったルールや理想に縛られ、不自由になってしまっているという点です。そして、その不自由さが不機嫌の原因になっていると分析します。結局のところ、自分を縛っているのは自分自身であることが多いのです。川原氏の著書『不自由から学べること』も、矢島氏の『ブレずに「やりたいこと」で食べていく起業』も、根っこの部分では「自分で自分を縛らない」というテーマが共通していると両氏は語り合います。

悩みを抱え、不自由を感じている様子の人物。現代社会におけるストレスや心の苦境を象徴するイメージ。悩みを抱え、不自由を感じている様子の人物。現代社会におけるストレスや心の苦境を象徴するイメージ。

心の土台となる「安寧」な状態とは

矢島氏は「安寧」という言葉を非常に大切にしており、「ご機嫌でいる」ことはその「安寧」を分かりやすく表現したものだと述べます。人がご機嫌でいられると、心に余白が生まれます。この余白があることで、自身のやるべきことが自然と見え、心が整っていくのです。すべての土台として、「まず、ご機嫌でいる」ことが何よりも重要だと、両氏の対談は示唆しています。

川原マリア氏と矢島里佳氏の対談からは、予測不能な時代においても悩まない生き方を見つけるヒントが得られます。自分の中にブレないを持ちつつ変化に流される柔軟さ、そして何よりも自分自身がご機嫌でいることを大切にする考え方。そして、自ら課した不自由な縛りから解放されること。これらの要素が、心の安寧を生み出し、困難な状況でも前向きに進む力となるのでしょう。現代社会の複雑な人間関係や仕事のストレスに直面したとき、この「自分で自分を縛らない」「まず、ご機嫌でいる」というシンプルながら力強いメッセージは、多くの人にとって心の支えとなるはずです。

出典:Yahoo!ニュース(ダイヤモンド・オンライン)