米軍機の脆弱性、ドローン攻撃が浮き彫りに：ウクライナ事例から学ぶ

ウクライナによるロシアの戦略爆撃機への衝撃的なドローン（無人機）攻撃を受け、複数の将官やアナリストは、高価値である米国の航空機に対する脅威を改めて検証している。これらの航空機は米本土や海外の基地に配備されているが、その現状には憂慮すべき点がある。

デービッド・オールビン米空軍参謀長は、３日にワシントンで開催された国防会議で現状に対する不安を表明した。同氏は、米国も同様の攻撃に対して脆弱であると明確に述べた。シンクタンク「新アメリカ安全保障センター（ＣＮＡＳ）」で非常勤上級研究員を務めるトーマス・シュガート氏もＣＮＮに対し、「米国本土であっても聖域は存在しない。国内の基地が事実上全く固められていないことを踏まえればなおさらだ」と指摘した。

「固められていない」という表現でシュガート氏が意味するのは、米軍機を駐機するための強固なシェルターが不足していることである。これらの施設は、ドローンやミサイルによる爆撃から機体を効果的に守れるだけの強度を備えている必要がある。

ウクライナ軍当局者は、今月１日の攻撃でロシア軍の航空機４１機に損害を与えたと主張している。この中には複数の戦略爆撃機や早期警戒管制機が含まれており、破壊または損傷したものがあるとされている。その後の分析により、少なくとも１２機が破壊されるか損傷したことが明らかになった。現場の衛星画像の検証は現在も続けられている。

ウクライナのドローン攻撃で破壊されたロシアの戦略爆撃機の残骸、米軍機脆弱性議論の背景

ウクライナの情報筋によると、この作戦に使用されたドローンはロシア領内に秘密裏に運び込まれた。ドローンは移動可能な木製の小屋の中に隠された状態でトラックに積まれ、基地近くまで輸送された後、遠隔操作で小屋の屋根が開き、ドローンが展開して攻撃を開始したという。

ロシアの航空機は、覆いのない駐機場に駐機していた。これは、国内外の施設に配備されている米軍機が置かれている状況と同様である。米陸軍の退役将官であるスタンリー・マクリスタル氏は３日、ＣＮＮの取材に対し、「我々は相当に脆弱だ」「我々が保有する高価値のアセットには極めて高額のコストがかかっている」と述べ、懸念を示した。ウクライナは当該の攻撃でロシアの航空機に７０億ドル（約１兆円）相当の損失を与えたとしている。参考までに、米空軍のＢ２爆撃機１機のコストは２０億ドルであり、米国が保有する同機の数は２０機のみである。

シュガート氏は、１月に公表された米シンクタンク「ハドソン研究所」の報告書の共著者の一人であり、この報告書は米軍施設に対する中国の脅威を浮き彫りにする内容だった。報告書は、両国の間で紛争が発生した場合、これらの施設が脅威に直面すると指摘している。シュガート氏と共著者のティモシー・ウォルトン氏は報告書の中で、「人民解放軍（ＰＬＡ）は、航空攻撃隊、地上配備型のミサイル発射装置、水上艦及び潜水艦、そして特殊部隊を使って米国の航空機及びその支援システムを攻撃できる。そうした機体やシステムは米国本土を含む世界中の航空基地に存在している」と記している。両氏の記述によれば、机上作戦によるシミュレーションや分析の結果、「複数の航空基地で、圧倒的多数の米航空機が失われる公算が大きい（損失は破滅的なものになる可能性がある）」という結論に至った。

米空軍と宇宙軍について報じるエア・アンド・スペース・フォーシズ・マガジンは昨年の記事で、グアムのアンダーセン空軍基地には頑丈なシェルターが一切存在しないと指摘した。この基地は恐らく太平洋で最も重要な米軍施設の一つと目されており、前述のＢ２の他、Ｂ１やＢ５２といった戦略爆撃機が定期的に配備されている。空軍のオールビン参謀長は３日、問題があることを認め、現時点で当該の基地への配備に懸念を抱いていることを示唆した。

マクリスタル氏は、基地及び航空機の防衛方法に加えて、基地周辺の監視方法も改めて検証する必要があると強調した。「対処が必要な脅威の領域は広がっている」と同氏は述べ、包括的な対策の重要性を示唆した。

ウクライナにおける最近の事例は、先進的な軍事技術を持つ国々が、従来型の防衛態勢に対して想定外の方法で損害を与えうることを示している。特に、高価で代替の難しい航空機を、比較的安価なドローン攻撃からいかに守るかという課題は、米軍にとって喫緊の検討事項となっている。