昨年の東京都知事選挙で注目を集めた石丸伸二氏(42)の政治活動に、かつての勢いが見えにくい状況となっています。石丸氏は来たる6月22日投開票の東京都議会議員選挙を見据え、地域政党『再生の道』を立ち上げました。この動きは、首都東京という重要な地で自身の政治的な地盤を築き、ひいては国政にも影響力を及ぼすことを目指したものと考えられます。全国紙の政治担当記者は、「石丸さんは一から議員として地盤を固めるタイプではなく、都知事選で得た165万票という影響力を活用して勝負に出たと見られる」と分析しています。都議会で一定の議席を獲得できれば、現職の小池都知事も無視できない存在となり、都政への関与を深める道が開けるとの青写真があったのでしょう。
そんな戦略のもと船出したかに見える石丸氏の新党『再生の道』ですが、選挙まで2週間を切った現在、石丸氏自身は街頭演説などに立ってはいるものの、大きな話題とはなっていません。YouTubeなどでの積極的な発信も続けていますが、以前のような反響が得られにくくなっているのが現状です。4月の時点では42選挙区(定数127議席)のうち36選挙区で45人の候補者を擁立する計画でしたが、その後5人が辞退し、最終的に40人体制でのスタートとなる予定です。
東京都議会議員選挙に向け、新党「再生の道」を立ち上げた石丸伸二氏が街頭に立つ様子
党の政策と候補者態勢の課題
『再生の道』が党として明確に掲げている政策は、「都議会議員の任期上限を2期8年とすること」のみです。それ以外の政策については、候補者それぞれが独自の考えを展開するという形態を取っています。これは新しい選挙戦のスタイルとも言えますが、その浸透度合いは不透明です。
スポーツ紙の政治担当記者は、「『再生の道』は端的に言えば“石丸伸二頼み”の政党だ。しかし、その石丸氏自身は都議選への立候補を見送っている。これで果たして有権者に浸透するのかどうか」と指摘しており、その体制に疑問を呈しています。
独自調査が示す厳しい情勢
独自に入手した情報によれば、自民党が水面下で実施した4月、5月の情勢調査では、『再生の道』にとって厳しい結果が出ています。現時点での『再生の道』候補者の予想獲得議席数は、まさかの「ゼロ」という状況が明らかになっています。
候補者を擁立した36選挙区の中で、まだ議席獲得の可能性があると見られているのは、定数3の目黒区、定数7の大田区、定数8の世田谷区、定数5の江戸川区などに限られているようです。その他の選挙区では、他党の当選圏内や当落線上の候補者から大きく差をつけられている状況にあります。
もちろん、「まだ投票先を決めていない」と回答している有権者が全体の20~30%ほど存在するため、今後の選挙戦の展開次第では情勢が一変する可能性もゼロではありません。しかし、『再生の道』の動きを警戒していた他党からは、「こんなものか」という安堵の声が聞かれるのもまた事実です。
かつての勢いが陰りを見せる理由
期待されていたほどの勢いが見られない原因について、あるテレビ局関係者はこう分析しています。「昨年の都知事選はいわば“奇襲作戦”だった。選挙戦序盤は泡沫候補扱いされながらも、SNSを駆使した選挙戦で注目を集め、既得権益打破やメディア批判を繰り返したことで、特に若者を中心に支持が爆発的に広がった。このムーブメントを“もう一度起こせるか”と言えば、それは難しいだろう。石丸氏に対する、いわゆる“慣れ”が生じてしまったからだ」。
都知事選後の石丸氏の発言や行動、公職選挙法を巡る告発、さらには自身の裁判沙汰なども、彼のイメージに少なからず影響を与えている可能性が指摘されています。
「オールドメディア」への期待と現実
都議選の告示日は6月13日です。さすがに告示日初日は石丸氏も街頭に立つと予想されますが、同党の候補者からは「選挙期間中にどれだけ応援演説に来てくれるのだろうか」「石丸さんが先頭に立ってくれると思っていたがそうでもなかった」といった不安や戸惑いの声も上がっているようです。
前出のテレビ局関係者はまた、「石丸氏はここにきて、あれほど批判してきた“オールドメディアの力”に期待しているように見えるが、テレビ朝日をはじめとして彼に嫌悪感を抱いている媒体は少なくない。都知事選の時のようにはいかないだろう。投開票日にどんな表情を見せるか見ものだ」と語っており、メディア側の厳しい見方を示しています。
“台風の目”となるはずが、風すら起こせないまま終わるのか。都議選投開票日まで残り少ない期間で、石丸氏がどのような巻き返しを図るのか、その手腕に注目が集まっています。