米国各地で航空管制システムの老朽化が深刻な問題となっています。長年の放置により、一部では今なお旧式の機器が使われ、機能不全が頻繁に発生。トランプ政権時代には大規模改善が指示されたものの、これが全米で相次ぐ航空機の遅延や欠航、さらには管制官と航空機間の通信途絶といった危険な事態を引き起こしており、大事故につながる可能性が懸念されています。システム全体の現代化が喫緊の課題として浮上しています。
ニューヨークの玄関口で起きた「最も危険な状況」
「ニューヨークの玄関口」の一つであるニューアーク国際空港(東部ニュージャージー州)では、今年4月から5月にかけて深刻なトラブルが頻発しました。特に4月28日には、同空港の航空機発着を管理するペンシルベニア州フィラデルフィアの管制施設で、レーダー画面が数十秒停止し、航空機との交信も一時的に不可能となる事態が発生。この影響で数百便に遅延や欠航が生じました。
当日勤務していた管制官は、CNNテレビの取材に対し、「考え得る限り最も危険な状況だった」と証言しており、一歩間違えば大事故に至りかねない状況であったことを示唆しています。この精神的負担から、複数の管制官が休職に追い込まれました。
通信障害は5月9日にも発生し、レーダー画面が約90秒にわたり停止。11日にも通信系のトラブルが相次いで発生しました。事態を重く見た米連邦航空局(FAA)は、同空港の発着便数制限という異例の措置を取らざるを得なくなりました。こうした状況を受け、遅延などの可能性を避けるため、一部の利用者はニューアーク空港の利用を避ける動きも見せています。
ニューアーク国際空港の管制塔や遅延便を示す掲示板のイメージ
「フロッピーディスク」「50年前のレーダー」:深刻なシステム老朽化の実態
相次ぐトラブルの背景には、全米の航空管制システム全体の深刻な老朽化があります。米メディアは4月のニューアーク空港での通信障害について、1980年代から使われている古い通信用銅線の損傷が原因だったと報道。トラブルが続く要因として、システム全体の老朽化を問題視しています。
米紙ニューヨーク・タイムズは、米国内の航空管制システムが新旧様々な機器、ソフトウェア、配線が混在した「ごちゃ混ぜのネットワーク」と化していると指摘。さらに、現場の管制施設の慢性的な人員不足も、問題解決を一層困難にしています。
米運輸長官は、システム老朽化の一例として、一部の施設で「フロッピーディスク」が未だに使われている状況を挙げています。また、通信回線が光ファイバーではなく銅線に依存している点や、一部のレーダーが「50年前のもの」であることに言及し、システム全体の抜本的な改修が不可欠であることを強調しました。
これらの問題は、米国における空の安全と効率性に直接影響するだけでなく、世界中の航空ネットワーク、特に日本との間の航空便にも潜在的な影響を及ぼしうるものです。大規模な投資と現代化への取り組みが、喫緊に求められています。
航空管制システムに使われている可能性のある旧式コンピューターやフロッピーディスクのイメージ
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