オレオレ詐欺など犯罪目的の迷惑電話で被害に遭う高齢者が、スマートフォンを通じて増加しています。従来の固定電話だけでなく、スマホが新たなターゲットとなり、手口も多様化・巧妙化しているため、特に、判断能力の低下しやすい高齢者は注意が必要です。こうした状況を踏まえ、被害を防ぐための具体的な対策や心構えについて、専門家に聞きました。
巧妙化する手口と高齢者の脆弱性
犯人は息子や孫、あるいは自治体職員や警察官などを名乗り、「会社の金を使い込んだ」「医療費の還付がある」といった緊急のトラブルや公的な権威を装って、動揺させて金銭を要求したり、個人情報を聞き出そうとします。「自分はだまされない」「身内の声を聞き間違えるはずがない」と思い込むケースが多く、詐欺だと疑わずに被害に遭う例が後を絶ちません。高齢者は、記憶力や理解力といった認知機能が徐々に低下し、状況判断や情報の真偽を見極める能力が弱まる傾向があるため、特に狙われやすい現状があります。
スマホ利用拡大に伴うリスク増大
近年、こうした迷惑電話が固定電話からスマートフォンにかかってくるケースが顕著に増えています。かつてオレオレ詐欺の電話は固定電話が大多数を占めていましたが、携帯電話(スマートフォン含む)への割合は、2023年の4%から2024年には34%へと急増しました。これは、高齢者のスマートフォン利用率の向上と連動していると考えられます。迷惑電話に出てしまうことで、資産状況などの個人情報が聞き出され、それらの情報が特殊詐欺や強盗などの他の犯罪に悪用される危険性も指摘されており、自治体や関係機関は、被害を防ぐための啓発活動を積極的に行っています。
東京都練馬区のスマホ教室で、迷惑電話からの被害を防ぐ対策を学ぶ高齢者たち。専門家のアドバイスに熱心に耳を傾ける様子。
専門家が指南する具体的な防犯策
情報通信サービスを手がける専門家は、高齢者向けスマホ教室などで、「電話の相手が狙うのは皆さんの個人情報。メールよりも直接声を聞ける電話に心を許しがちなので、情報を伝えないことが何よりの対策」と強く呼びかけています。NTTドコモの担当者は、具体的な電話の対応について「表示される電話番号をよく見て、特に国際電話には注意してほしい」とアドバイスします。国際電話は、「+1」や「+44」のように「+」と「国番号」で始まるのが特徴です。これらの番号は発信元の特定を難しくするために悪用されるケースがあります。たとえ国際電話の末尾が警察署と同じ「0110」であっても、本物の警察からの電話ではない可能性が高いです。また、一回だけ鳴って切れる「ワン切り」は、かけ直すと高額な国際通話料が発生し、犯罪組織の収益源となる恐れがあるため、絶対に応答したりかけ直したりしないよう警告しています。
詐欺の手口は日々変化しますが、不審な電話に対しては常に警戒が必要です。知らない番号や怪しい電話には安易に応答せず、個人情報は決して伝えないこと。電話で「お金」や「キャッシュカード」「暗証番号」といった話題が出たら、それは詐欺を疑うべき明確なサインです。不審な点があればすぐに電話を切り、家族や警察に相談するなど、冷静かつ迅速に対応することが自身を守る最善策です。