今夏に実施される参議院議員選挙の公示が迫る中、一部の自民党関係者の間で「首相と共に消えてほしい」と囁かれている人物がいます。それは、将来的な石破茂首相の側近と目される、参院議員の青木一彦官房副長官です。特に地元島根県では、青木氏に対する評判は芳しくなく、次期石破政権の「アキレス腱」になりかねないとの懸念が広がっています。
青木一彦氏は、生前に「参院のドン」として君臨した青木幹雄元官房長官の長男という立場にありますが、その影響力が地元での政治的な軋轢を生んでいます。今回の参議院選挙における島根県の候補者選考を巡る動きは、その典型と言えるでしょう。
石破茂氏の肖像写真。石破茂氏の首相就任が予想される中、側近である青木一彦氏への注目が集まっている状況を示唆。
島根県連内の候補者選考と軋轢
今年1月、島根県を地盤とする現職の三浦靖参院議員が次期選挙への不出馬を表明しました。これを受け、自民党の鳥取県連と島根県連は、改選数1の鳥取・島根選挙区に、新人で元島根県議の出川桃子氏を擁立することを決定しました。
しかし、島根県連が出川氏を候補者に選んだ予備選は、県連内部にしこりを残す結果となりました。予備選は公募で行われ、島根県議会の第1会派である「自民党議員連盟」に所属する県連幹事長の園山繁氏と、第2会派「自民党ネクスト島根」の出川氏が立候補しました。結果は出川氏が64票を獲得し、わずか8票差で勝利しました。
自民党の青木一彦参議院議員の写真。地元島根での政治的確執の中心人物として報じられている。
県知事選に端を発する根深い確執
同じ自民党内に二つの会派が存在する背景には、平成31年春に行われた島根県知事選の影響があります。県議会の第1会派に連なる議員らは、元総務官僚の丸山達也氏を擁立して当選させました。一方、青木氏と一部の県議は、元消防庁次長を立てましたが敗れ、その後会派を離脱しました。
この知事選での対立が、青木氏と第1会派の間に根深い確執を残しました。今回の参院選候補者予備選における青木氏の動きは、この時の敗北に対する「意趣返し」と見られています。
島根県議会の関係者は、青木氏が第1会派の中心人物である園山氏を特に嫌っていると指摘します。青木氏は「園山以外の人間で、俺の言うことを聞く若い人間なら誰でもいい」と公言し、複数の候補者に断られた末に出川氏に白羽の矢を立てたとされます。
出川氏への不安と青木氏の強硬姿勢
出川氏の擁立についても、党内からは不安視する声が多く聞かれます。特に指摘されるのは、4年前の松江市長選に出馬した際、市内にある中国電力島根原発2号機の再稼働に慎重な姿勢を示していたことです。「反原発の共産党関係者と行動を共にしていた」という声もあり、自民党内には根強い反対意見がありました。
しかし、青木氏はこうした反対意見を押し切り、出川氏の擁立を強行しました。「参院議員なんて誰でもいいけん」と、周囲からすれば信じがたいような発言まで口にしたとされています。政権中枢にいる青木氏の意向には誰も逆らえず、表面上は従いながらも、内心では反発する「面従腹背」の状況が生まれています。出川氏の後援会長選びも難航するなど、党内には混乱が見られます。
この地元島根での青木氏を巡る確執と、それに伴う参院選候補者擁立の混乱は、石破氏が首相となった場合、その政権運営における不安定要素となる可能性を孕んでいます。