神戸市は2025年6月7日、中央区のラーメン店「METRO RAMEN」で食中毒が発生し、食品衛生法に基づき3日間の営業停止処分としたと発表しました。この神戸のラーメン店を巡っては、数日前からSNS上で食後の体調不良を訴える投稿が相次いでおり、市が調査を進めていました。
神戸市のラーメン店「METRO RAMEN」公式Xアカウントのスクリーンショット。食中毒による営業停止命令後。
詳細な調査結果と患者の状況
神戸市食品衛生課によると、6月6日に市保健所へ「5月31日に中央区の飲食店を利用した4名のうち3名が下痢・発熱などの症状を呈している」との届け出がありました。これを受け、市は調査を開始。5月25日から6月2日までの期間に同店を利用した客のうち、調査ができた7グループ8名が、5月28日以降に下痢、発熱、頭痛、関節痛などの食中毒症状を訴えていることが確認されました。市は、患者全員に共通する食事が同店の食事以外にないこと、患者の発症時期、診察した医師からの食中毒の届け出などを総合的に判断し、同店で提供された食事が原因の食中毒であると断定しました。幸い、患者は概ね全員が快方に向かっているとのことです。
食中毒の原因と疑われる「鶏レアチャーシュー」
今回の食中毒問題は、6月6日にX上で同店での食事後の不調に関する投稿が急増したことで広く知られるようになりました。特に、同店の人気メニューに含まれる鶏肉製のチャーシューが原因ではないかとの指摘が多く見られ、「カンピロバクター」が関連キーワードとしてトレンド入りする事態となりました。神戸市の発表では、食中毒の原因物質は現在調査中ですが、原因となった食事は「加熱が不十分であった可能性のある鶏チャーシューを含む食事」とされています。具体的には、「加熱不十分な鶏チャーシューがのった鴨出汁ラーメンや貝出汁ラーメン」を喫食した患者が確認されています。しっとりとした食感が特徴の鶏レアチャーシューは、提供する飲食店も増え人気がありますが、適切な加熱処理が行われていない場合、食中毒のリスクを伴います。
カンピロバクター食中毒のリスクと注意点
食中毒の原因菌として疑われるカンピロバクターは、家きん類、特に鶏の消化管に高頻度で生息している細菌で、食肉処理の過程で肉の表面に付着することがあります。食肉の生食や加熱不十分な状態で食べたり、生肉を扱った器具からの二次汚染などにより感染します。カンピロバクター感染症の潜伏期間は通常2〜5日と比較的長く、長い場合は1週間程度で発症します。患者の発症時期(5月28日以降)は、喫食日(5月25日〜6月2日)と一致しており、カンピロバクター食中毒の特徴と合致します。主な症状は激しい下痢、腹痛、発熱、頭痛、吐き気などです。まれに、感染から数週間後に手足の麻痺などを起こす「ギランバレー症候群」を続発することがあり、注意が必要です。厚生労働省によると、カンピロバクターは国内で発生する細菌性食中毒の主要な原因の一つであり、2024年には1141人の患者が報告されています。過去にも、鶏のたたきや鶏刺し、今回の事例のように鶏レアチャーシューなど、加熱が不十分な鶏肉料理によるカンピロバクター食中毒は全国で発生しています。厚生労働省や各自治体は、家庭や飲食店に対し、鶏肉は肉の中心部まで十分に加熱(75℃で1分以上)すること、生肉と他の食品や調理器具からの二次汚染を防ぐことなどを繰り返し呼びかけています。「お店で提供されているから安全」と過信せず、特に鶏肉料理については加熱の状態を確認することが重要です。
結論
神戸市のラーメン店「METRO RAMEN」で発生した今回の食中毒は、加熱不十分な鶏チャーシューが原因として強く疑われています。人気の高い鶏レアチャーシューなどに潜むカンピロバクター食中毒の危険性を改めて認識する事例となりました。消費者側も、飲食店での食事の際に提供される料理の安全性に意識を向け、特にリスクの高い食品については適切な調理がされているか注意を払うことが、自身の健康を守る上で重要です。飲食店側には、食品の安全な取り扱い、特に加熱が必要な食材については衛生管理基準を厳守することが強く求められます。
参考文献
- 神戸市発表資料
- 厚生労働省 食中毒に関する情報