ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、ロシア国防省は8日、ロシア軍がウクライナ東部ドネツク州の州境を越え、同州の西に位置するドニプロペトロウスク州に進軍したと主張しました。これは戦況における新たな展開として注目されます。
ドニプロペトロウスク州進軍に関する主張と反論
ロシア側の主張
ロシア国防省は、部隊がドネツク州からドニプロペトロウスク州に入ったと具体的に主張しています。この主張は、ロシアが東部ドネツク州の完全制圧を目指す中で、戦線がさらに西に拡大している可能性を示唆するものです。
ウクライナ側の否定
一方、ウクライナ側はこの主張を強く否定しています。ウクライナメディアによると、同国軍参謀本部の高官は同日、ドニプロペトロウスク州に進軍したとするロシアの主張は「偽情報だ」と指摘しました。これは、ロシアが情報戦を展開しているとの認識に基づいています。
軍事メディアの報告
ウクライナの有力軍事メディア「ディープステート」も同日、ロシア軍は現在、ドニプロペトロウスク州まで2キロの距離にいると報告しました。これはロシアの主張する「進軍済み」とは異なり、依然として州境に近い位置に留まっていることを示唆しています。
メドベージェフ氏の発言
メドベージェフ露国家安全保障会議副議長は8日、自身の交流サイト(SNS)に、ロシア軍がドニプロペトロウスク州に進軍したことに言及し、「交渉で戦争の現実を認めようとしない者は、地上での新たな現実を引き受けることになる」と投稿しました。この発言は、ウクライナに対し早期に抗戦を断念するよう迫る意図があると考えられます。
露軍の狙い分析
ロシア軍は現在、全域の制圧を狙うドネツク州でウクライナ軍の強い抗戦に直面しており、重要拠点を長期間制圧できていません。この状況下で、ドニプロペトロウスク州方面への進軍を主張することで、ウクライナ軍の戦力を分散させようとしている可能性も指摘されています。
スムイ州での制圧主張
ロイター通信は8日、ロシア軍が過去約1カ月間でウクライナ北東部スムイ州の190平方キロを制圧したもようだと伝えました。スムイ州はロシアと国境を接しており、この情報が正確であれば、国境付近でのロシア軍の攻勢が続いていることになります。
捕虜交換・遺体返還の延期問題
戦況とは別に、人道的な問題も浮上しています。5月2日にトルコで行われたロシア・ウクライナ間の交渉で、捕虜交換と戦死者の遺体返還について合意がなされました。
ロシア側の主張
この合意に基づき、ロシア代表団トップのメジンスキー大統領補佐官は7日、同日にも予定されていた捕虜交換と遺体返還をウクライナが一方的に延期したと主張しました。タス通信がこの情報を伝えています。
ウクライナ側の反論
これに対し、ウクライナ当局は、ロシアが一方的に日付を決定したと反論しています。ウクライナ側は、合意実施に向けた作業を続けているとしており、ロシア側の主張とは食い違いを見せています。
結論
ロシアによるウクライナ侵攻では、ロシア軍のドニプロペトロウスク州進軍に関する主張とウクライナ側の否定という情報戦が展開されています。また、スムイ州での新たな制圧主張や、捕虜交換・遺体返還の延期を巡る両国の対立も続いています。ウクライナ当局は、人道的合意の実施に向けた作業を継続しているとしています。
参照元
ロシア国防省
ウクライナ軍参謀本部
ディープステート (ウクライナ軍事メディア)
メドベージェフ露国家安全保障会議副議長 (SNS投稿)
ロイター通信
メジンスキー大統領補佐官 (引用元: タス通信)
ウクライナ当局
[Source link] (https://news.yahoo.co.jp/articles/437a17860dc2e614a10da3f7a3d16112fbb78b49)