華やかに見えるアスリートだが、その輝けるときは短い。トレーニング方法やスポーツ医学の進歩により、以前よりも選手寿命が長くなっているとはいえ、多くの選手が30歳前後で第一線を退く。
日本のトップアスリートの大半は子どもの頃から競技に専念してきたため、スポーツ以外の世界とのつながりが少なく、アスリートのセカンドキャリアはスポーツ界の大きな問題となっている。
元Jリーガーの尾身俊哉さん(30)は、サッカーJ3のY.S.C.C(横浜スポーツ&カルチャークラブ)に在籍も4年で引退。その後起業し、会社を拡大させている。なぜ彼はうまくスタートダッシュが切れたのだろうか。
尾身さんのファーストキャリアを生かしたセカンドキャリア“戦術”を紹介する(この記事は前編・後編でお届けします。本稿は後編です)。
【写真】元Jリーガーの尾身さんが行う特殊清掃の様子
前編:特殊清掃を仕事にした30代元Jリーガーの“覚悟”
■特殊清掃を選んだ理由
前編の一戸建ての次に、尾身さんが清掃に入ったのは、50代の男性が暮らしていた3階建てのマンション。
前回とは違い、2DKの部屋は整理整頓されていたが、最高気温が35℃を超える日が2週間以上続いていたこともあり、亡くなっていた場所は赤黒い体液でドロドロ。目に染みる腐敗臭と、想像以上に凄惨な現場だが、尾身さんは顔色1つ変えずに作業を進めていく。
マンションは一戸建て以上に臭い漏れなどの配慮が必要になる。体液が染み付いたものは三重に密閉して、さらに周りから見えないように段ボールで隠して外へ運び出す。近所に知られたくないからと深夜に作業してほしいと依頼を受けることもある。
年代別サッカー日本代表にも選ばれたことのある元Jリーガーの尾身さんは、なぜ現役引退後のセカンドキャリアに特殊清掃を選んだのだろうか。
それは「人がやりたがらない仕事だから」だ。





