トランプ前米大統領とイーロン・マスク氏(テスラCEO)の対立が深まる中、マスク氏がアルゼンチンの「チェーンソー改革」を引用しトランプ氏を批判、不和が激化している。
トランプ前米大統領とイーロン・マスク氏が過去にホワイトハウスで会談した際の様子。両者の関係は現在対立が深まっている。
マスク氏のアルゼンチン改革称賛とトランプ氏批判の意図
マスク氏は7日、自身のSNS「X」でアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領による緊縮財政を称賛する投稿を共有した。その投稿では、「ミレイ氏は政府支出を30%削減し、わずか1ヶ月で財政黒字を達成した。彼の人気は衰えず、むしろ上昇している。緊縮財政が大衆に不人気だと言うのは間違いだ。ワシントンを支配する特定の利益集団に不人気なだけ」という主張が展開された。この投稿には、ミレイ氏が大統領選挙運動中にチェーンソーを振るう象徴的な写真が添えられていた。アルゼンチンの日刊紙ラナシオンは、マスク氏がミレイ氏への理念的な共感を通じ、トランプ氏が「大きくて美しい一つの法案」と呼んだ減税策(米国財政赤字を拡大させると批判)を間接的に攻撃したと分析した。
アルゼンチンの緊縮政策とミレイ大統領・マスク氏の関係
経済学者出身のミレイ大統領は、就任後に18あった中央省庁を8に削減し、約4万人以上の公務員を解雇するなど、財政支出を約30%削減した。世界銀行と国際通貨基金(IMF)は、今年のアルゼンチンの経済成長率が5%を上回ると予測している。マスク氏は、ミレイ氏が大統領候補だった頃からその財政緊縮公約に関心を示しており、就任後も複数回会談し、連携を深めてきた。今年2月には、米国の保守団体のイベントでミレイ氏と再会し、ミレイ氏から自身の選挙運動のシンボルであるチェーンソーをプレゼントされたという経緯がある。
トランプ氏の反応と続く両者の舌戦
一連の公開舌戦により、トランプ氏とマスク氏の不和は極限に達した。ワシントン・ポスト紙によると、トランプ氏はSNSでの舌戦を交わした5日、ペンス副大統領に対し、「(マスク氏の)問題を公的に扱う際は外交的に」と指示したとされる。同紙はまた、トランプ氏が周囲にマスク氏との関係を相談する中で、マスク氏を「ひどい麻薬中毒者」と呼び、行動が薬物の影響による可能性に言及したと伝えた。マスク氏は、一部のトランプ氏批判投稿を削除しつつも、米国の連邦政府支出の急増と共和党への批判を含む投稿を追加で共有し、両者の対立は続いている。
マスク氏がアルゼンチン事例でトランプ氏の財政政策を批判したことは、両者の対立が政策論争だけでなく個人的な側面も含む根深いものであることを示唆する。この不和は、今後の政治・経済情勢に影響を与えうる。