米流通の「ブラックボックス」問題 小泉氏・石破氏が改革へ動く背景

米の価格高騰が続いている状況下、元農林水産大臣である小泉進次郎衆議院議員が衆議院農林水産委員会で述べた「コメの流通は極めて複雑怪奇」「ある卸売の営業利益500%」といった発言が波紋を広げています。この発言は、不透明とされる日本の米流通システムに対する疑問を呈し、その可視化の必要性を強く訴えるものです。長年指摘されてきたこの「ブラックボックス」に、現在どのような問題があり、政治がどのように向き合おうとしているのかを探ります。

小泉進次郎氏が指摘する米流通の「ブラックボックス」

6月5日の衆議院農林水産委員会において、小泉進次郎氏は米の価格高騰を議論する中で、流通段階における不透明性、すなわち「ブラックボックス」が存在するという指摘が多数寄せられていることに言及しました。同氏は、現在の複雑なコメの流通状況を「可視化させたい」との意向を示しました。さらに具体的な事例として、「ある卸会社は売上高が(前年比)120%を超えていて、営業利益も(前年比)およそ500%だ」という驚くべき数字を挙げ、「どうしてこんなことが起きているのかを一つ一つ解明したい」と述べ、流通の歪みに対する問題意識をあらわにしました。

ドン・キホーテ社長が見る価格高騰の構造的問題

備蓄米の販売なども行う小売大手のドン・キホーテの社長は、米価格高騰の要因について、現在の流通システムに起因する3つの問題を指摘しています。
まず一つ目は、最大5次問屋まで存在するとされるこの多重構造が、各段階でマージンを発生させ、最終的な価格を押し上げている点です。
二つ目は、JAグループと取引する1次問屋が実質的に特約店のような形で決められており、新たな事業者の参入が極めて難しい構造になっていることです。
三つ目は、逆に2次問屋以降の参入ハードルが低いため、転売目的などの業者が横行し、市場の混乱や価格の吊り上げを招いている可能性です。これらの構造的な問題が、米価格高騰の主要因として考えられています。ジャーナリストの青木源太氏は、新規参入が困難な状況が「利権化」を招くと指摘し、消費者からはこの複雑な構造が見えにくい現状を問題視しました。住田裕子弁護士も、ITを活用すれば流通経路の簡素化は可能であるにも関わらず、それが進まない背景には「既得権」があると厳しく批判しています。

日本の米流通改革について語る政治家たち日本の米流通改革について語る政治家たち

石破茂氏「農水相当時にできなかった改革を」ジャーナリスト明かす

長年、農林水産行政にも深く関与してきた石破茂衆議院議員も、この米流通問題に強い関心を示しています。小泉氏や石破氏を取材しているジャーナリストの鈴木哲夫氏によると、石破氏は鈴木氏に対し、「農水相当時にできなかったことをやる!」とはっきりと語ったといいます。これは、米の流通問題が以前から認識されていたにも関わらず、政治的な圧力や既得権益によって改革が進まなかった背景を示唆しています。

鈴木氏によれば、石破氏は自身の農林水産大臣在任中にもこの問題に取り組もうとしたものの、永田町や自民党内のいわゆる「農水族」や既得権益を持つ層からの抵抗により、改革を十分に推し進めることができなかった経験があるとのことです。石破氏は、5月11日に流通改革への決意を語った際にも、「流通をとにかく徹底してやる」と述べており、その強い意志がうかがえます。したがって、今後の米流通改革における最大のポイントは、この複雑な流通構造をいかに簡素化し、より多くの事業者が自由に参入できる環境を整備できるかにかかっています。石破氏が「やる」と公言している改革は、小泉氏にも共有されており、両氏が連携してこの難題に挑む姿勢が見て取れます。

米流通の不透明性と多重構造は、長年にわたり日本の農業政策における課題とされてきました。今回の小泉氏による国会での具体的な指摘と、石破氏の過去の経験に基づく改革への強い決意は、この問題にいよいよ本格的に光が当てられ、是正に向けた動きが進む可能性を示唆しています。今後の改革の行方が注目されます。

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